お兄ちゃん、おかしいよ？最終章【S.S】 (ページ22)

今日:8 hit、昨日:9 hit、合計:8,924 hit

121話ページ22

.

バァン！と何か耳をつんざく様な大きな音がした瞬間、自身の肺に一気に空気が流れ込む。

健人「ッぐぁ…！！」

膝から崩れ落ちる。

なんの前触れも無く流れ込んで来た酸素を上手く取り込むことが出来ず、激しく咳き込む。

…何が起こっている？

まだ目や耳が正常に活動していない為、今の状況を呑み込めなかった。

未だ整わない呼吸は荒く、それどころでは無かった。

すると、不意に肩を抱かれる感覚があった。

グイッといささか強い力で抱えられてどこか別の場所へ引っ張られて行く。

何…？誰…？

霞む目と、遠く籠る様に聞こえる耳を精一杯働かせて今の状況を確かめようした。

そうして、ふと思い出す。

自分が電話をしたことを。

健人「…ッ！！触、るな…

Aをッ…Aを離せええええ！！！」

それは一瞬だった。

まず、兄の手を撃って私の首から外し、

離れた私と、勝利君を兄の手が届かない場所へ移し、

その間に間髪入れず兄を取り押さえる。

…間に合った。

間に合ったのだ。

健人「Aにッ…！Aに触るな！！

Aが汚れる…！！離せ！！！」

兄は取り押さえられながらも、これでもかという程の怒鳴り声を上げて叫んでいた。

怖くて、怖くて。

このまま目や耳が使えなくなればいいのに、などと思ってしまう。

しかし、その思いとは裏腹にだんだんと正常に戻ってゆき、はっきりと兄の顔が見えた。兄と目が合った。

その瞬間、心臓を鷲掴みにされた様な感覚がした。

怒り狂った瞳とは違う、何かを強く求める執着の瞳。

すぐに顔を逸らして俯く。

目が合ったのは本当にほんの一瞬だった。

その一瞬で私の中の奥底に大きな釘が打たれたような気がした。

…でも、終わったのだ。

兄が、これ以上罪を重ねるのを止めることが出来たのだ。