110話 ページ11
佐藤side
佐藤「……ぅ、」
目を開けると、ただ真っ暗な視界。
確認する様に瞼を何度か瞬かせる。
頭がズキズキと痛む。
何だここは、と身体を動かそうと身をよじったとき気付く。
息が上手く出来ない。
腕が動かない。
足も動かせない。
それもその筈。
口にはガムテープ。腕はテープの様な物で後ろ手に縛られ、足も同様にガッチリと固定されているのだから。
だが、暗闇の中外す術も無く、ただ無理に外そうと無意味な事を繰り返すだけ。
何故こんなことに？
ここは何処だ？
そう思った瞬間、ガチャリと扉が開く音がした。
その主は一言も発すること無く、一歩一歩と近付いてくる。
この真っ暗な暗闇の中、言いようのない恐怖が襲う。
佐藤「…ッふ」
そうしている間にも気配はどんどん近付いて来る。
いよいよ触れる程の距離まで気配が近付いた。
健人「…目が覚めた？」
誰だ…？
佐藤「………」
健人「あー…、そっか。
真っ暗だから何も見えないよね、君の場合は」
どういう意味だ？
近くにいるこの人には見えている、ということか？
佐藤「…っ！」
…いや、目隠しだ。目隠しを着けられている。
この事がさらに俺の恐怖心を煽った。
あちらには自分の姿が見えている、たがこちらはあちらのことも、自分自身のことも全く確認出来ないのだ。
今更ながらに何故自分がこんなことになっているのか、必死に気を失う前までの事を思い出そうとした。
…が、思い出す暇も無く自身の右肩にこれまで味わったことが無い程の激痛が走る。
佐藤「_____…ッ！！！」
健人「…痛い？痛いだろ？
どう？刺される気持ち」
笑いを含んだ様な声音で優しげに言う。
もう何が何だか分からなくなる程自分の頭の中は錯乱状態に陥っていて、あちらが何を言っているのかも理解出来なかった。
健人「…ははっ、泣いてるんだ」
余りの痛みに自然と涙が溢れていたらしい。
健人「…お前に聞きたいことがある。
………何で生きてる？」
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作者名：ユリ | 作成日時：2021年6月5日 18時
