35話 ページ46
『っ…！だって、そうじゃないですか…私がリッパーの元にいる限り、トレイシーとウィリアムくんは…イライさんだって逃げれたんですよ…？そしたら貴方達は怪我を負わずに済んでいたのにっ…！』
私はイライさんにそう言い、あのゲームの何処かで負ったのであろう彼の腕と肩の傷に目をやる。
邪魔になりほうな量の包帯がイライさんに巻かれているのが目に見えて分かった。
『…私が助けを求めたせいで…こんな事に…』
あまりの罪悪感に心の声が漏れてしまう。
「…そんなこと…」
するとイライさんは、目隠しを手で摘み、少し浮かせて震えているようにも聞こえる声でそう呟く。
「まるで君が…助けを求めてはいけないみたいな言い方…じゃないか…」
今にも消えてしまいそうなくらい小さくか細い声は、静かで月の光しか頼りになりそうにない病室の中では聞こえない、という事はなく。しっかりと私の耳へと入っていった。
この人も…大分優しい人だ。
『でも…実際に今回、そのせいで皆が傷付いてしまったじゃないですか…』
「…Aさんは、僕達が自分の保身の為だけに…勝利する為だけに動いていると思っているのかい…？」
暗闇の中、月の光が私達の存在を嫌にも肯定させようと、二人を照らしてくる。
そして、こんな綺麗な夜には見合わない程の話と雰囲気に何だか申し訳無くも感じてしまった。
『逆にイライさんは…勝つことが最優先だとは思わないんですか…』
「それは勿論…勝利することがチームの為にもなるし、それが最優先だとは僕も思ってるさ…」
『そ、それなら…！』
「っ…！でも…！君だって、自分が逃げれば三逃げで勝利で一人が捕まっている状況だと…間違いなく仲間を助けにいくだろう…！」
言い返すことも出来ず、言葉が喉に詰まる。
イライさんは私のそんな反応を見るととても優しく、そして儚くも思える笑顔を浮かべる。
「僕達が今回したことは…君がいつもしていることと同じなんだよ…」
思わず笑みが溢れてしまう。
次第に目尻が熱くなり、視界が歪む。
涙が零れてしまわぬよう深く瞬きをする。
だがそれは逆効果だったらしく、ポロポロと私の心の殻が剥がれ落ちていき、涙が溢れてくる。
『…私って…やっぱり最低だ…』
もう、涙は隠せない。
最近は人の前で泣いてばかりだ。
深夜だったから。を言い訳に私は必死に声を押し殺して泣いた。
イライさんの手は、心地が良い程に冷たかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カシューナッツ炒め(プロフ) - うぉううぉう…めっちゃ面白いですね！！続き楽しみにしてます！！ですが嫌われてる要素が少ないと思います！嫌われストーリーという設定や夢主設定等はめちゃめちゃいいのにそれがもったいないと思います！！応援してます！ (2021年8月24日 0時) (
レス) id: ea7d5bd598 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - 小説自体はとても面白いです。だけどイラストが足枷となってしまってかこれ以上読むことが出来ません。ごめんなさい (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - イラストを載せるのはいいと思うんですが、私はイラスト載せられるとイメージがイラストに定着してしまうので見たい人だけ見れるようにして欲しいです。 (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
柏木美琴(プロフ) - ウィリアムくんまさかの左右w (2021年1月11日 9時) (レス) id: 12d89760b5 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠いろ(プロフ) - かりんさん» 関係設定を評価してくださるのは本当に嬉しいです！！Twitterフォロー？！もうめちゃくちゃ嬉しいですぅぅ…！！ありがとうございますっ！！ (2020年4月17日 20時) (レス) id: c3dcbab85a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翡翠いろ | 作成日時：2020年3月31日 18時
