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「俺は……愛されないと愛せないんですよ、アンタを」
「知ってる、だからこう言ってるの」


声は近くて遠い。
まるでガラス越しに聞こえる声のよう。


「愛されてみたかった」
「俺がアンタを愛していたのに?」


だって、俺は、俺らは確かにアンタたちの望むように愛したはずなのに、どうしてそんなことを。


「そんなこと言うなら私を見つけてみてよ」


変わらずAは目を閉じたまま立っている。
俺も変わらずAを見つめたままだ。


「……ごめん」
「謝らないで、惨めなだけじゃない」


雨の降る音がする。
けど俺はこの雨を止ます方法を知らない、濡れることすらできない。


「俺も、俺達もアンタ達を愛したい」
「本当に愛されてるのはどっちなんだろうね」


黒い百合が俺らを嗤う。
皮肉のようにこの花は彼女によく似合った。


「アンタはずっと俺のことを変わらず愛してくれていますね。なのに、なんで俺らはっ……!」
「アンタって名前じゃないよ」
「Aでもないやろ。……いや、アンタはどっちなんやろ」


彼女の声はやっぱりガラス越しで聞き取りにくかった。


「愛して」
「……愛したいんすよ、俺も」


黒百合は周りの花を無くして俺らを囲んだ。


「逢いたい」
「愛したい」


言葉が重なる。
これ以上言ったら、お互い辛くなるだけなのに。


「愛されたい」


俺はAの方を向いたまま、手で顔を覆って涙を流す。
彼女を抱きしめることはできないから、泣く。

けど、俺はAに触れられるから。


きっと辛いのは、彼女の方なのだろう。






黒百合は枯れない。

3_解説→←夢は現実を覆せない



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夜有(プロフ) - 百瀬のえるさん» ありがとう御座います!いつかまた会えるときが来ましたら、そのときはよろしくお願いします。 (2021年1月1日 23時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬のえる(プロフ) - 更新ありがとうございました!大好きです!!お疲れ様でした! (2021年1月1日 23時) (レス) id: 90299a5c54 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - はい!それではお願いします! (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - 黒音さん» あ、いえ!その可能性も考えてたのにそこも確認してなかった私もすみませんでした。リクエスト承りました! (2019年10月15日 16時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - 返信ありがとうございます!個人的にはハッピーエンドがいいですが作者さんの書きやすい方で良いですよ(それと夢主が死んだ後の事なのですが前世の時の事です。分かりづらくてすみませんでした) (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜有 | 作成日時:2019年4月7日 22時

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