39.微雨は降るのをやめた ページ2
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「せつな、出掛けよ」
「え?」
私が蝶屋敷から出て一ヶ月。
お館様の許可もおり、私は今まで通り任務にまっとうする日々を送っていた。
流石に一夜で四十体の鬼を倒すような成果はないが、
最近できていなかった
「死化粧」
というなんとも響きの悪い副業も多忙ながらも地道に任務とともにこなしていた。
久々の休日だった私であるが、体が鈍ってしまうので無一郎と稽古をしていた。
修練場では木刀同士が激しい音を鳴らしながら木霊していた。
「っ、そこ…!」
「…させない」
互いの木刀が一際強くぶつかりあったとき、それは二人の手中からするりとすり抜けた。
「……引き分け…ってことかな?」
「え、僕の勝ちでしょ」
あきらかな相討ち判定が出るであろうその結果に、何故か無一郎は口を尖らせ、相討ちを認めない。
「えっ、なんでそうなるの?!」
せつなはそんな無一郎に異論を唱えた。
「……だって、僕がせつなを守るのにせつなと同じ強さだと僕が守る必要なくなっちゃうじゃん」
彼はなんとも珍しく、少し照れを孕んだ表情で言った。
そんな言葉を聞けば、普段は照れたり笑ったりするせつななのだが、今日の彼女は様子がおかしかった。
「……じゃあさ、むい」
「何?」
「むいは、私をどんな形でも守ってくれるの?」
せつなの問い掛けに無一郎は大きな瞳をほんの少し瞬かせたあと、「そのつもり」と言った。
その応えを聞くとせつなはまた口を開いた。
「…なら、むいは、私が地獄に落ちようとも…
地獄の奥底に落ちてもついてきてくれる?」
その言葉に、無一郎はコクリと頷いて、
「あの世でも、天国でも、地獄でも、来世でも君を守るし、ついてく」
彼の眼差しに嘘偽りはなく、せつなそんな無一郎に少しだけ狼狽えた。
「…そっか、なら私、いつでも死んじゃえるね」
「でも、先に死んだらゆるさない」
「いや、どっちさ」
…あなたの言葉に私は気持ちが楽になったはずなのに、なんでこんなに苦しいんだろうね
何処か戸惑いを見せる彼女に対して無一郎は口を開いた。
「せつな、出掛けよ」
「え?」
こうして結局何の脈絡もなく話は序盤へと繋がるのであった。
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作者名:ユズリハ | 作成日時:2020年1月27日 22時