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観光客や仕事帰りの人で賑わう国際線ターミナルを進むと、少し怖めな外見をした男性を見つけた。
『片岡さん！』
男性はこちらの声に気づくと見た目とは裏腹に優しい笑みを返す。
『お待たせしてすみません！久しぶりの東京で迷っちゃいました』
片岡「いや、全然待っていない。長旅ご苦労だったな」
片岡はAのスーツケースを受け取りエントランスに停めていた車のトランクに積む。
片岡「それは後部座席に置くか？」
『いえ、持たせて下さい』
片岡「分かった。揺れるから気をつけてな」
『はい』
Aは助手席に座るとシートベルトを閉め、持っていたケースを抱え込んだ。
所々焦げて溶けた側面にそっと指を当て窓からの景色に目を向ける。
『やっぱり東京は賑やかですね』
片岡「そうだな。けど宮城も自然が溢れていていいところじゃないか」
『田舎ですよ』
片岡「都会にいるとたまにそういうところに行きたくなるさ」
『今は立ち入り禁止区域になっちゃいましたけどね』
片岡「...そうだな」
『でも、復興したらぜひ遊びに来てください！』
片岡「ああ。その時は案内を頼もう」
『はい！』
Aは嬉しそうに再び窓の外に視線を戻した。
車が駐車したのは、とある高校の学生寮。
『ここが青心寮かぁ』
片岡「今高島を呼んでくるから待っていてくれ」
『はい』
スーツケースを受け取ったAは高島が来るまで辺りを見渡す。
『ここがお父さんが通ってた高校なんだ...』
錆びれたフェンス、色落ちした「青心寮」の文字、洗濯竿に不器用に干された練習着らしき服
少し汚いけど
『暖かそうだなぁ』
高島「そういった子は初めてだわ」
『！』
いきなりの背後からの声に振り返る。
高島「お待たせ。貴方が天音Aちゃんね？」
『は、はじめまして！』
高島「はじめまして。私は高島礼。今日から貴方のサポートをさせて貰うわ」
『高島さんですね。よろしくお願いします！』
Aは深々と頭を下げる。
高島「貴方のことは監督から聞いているわ。...大変だったわね」
『！』
高島の哀れむような表情に
『そんな顔しないでください。せっかく、今日からまた新しい生活が始まるんですから』
高島「！」
可哀想とは言わせないほどの笑みを返した。
『寮の案内、お願いしてもいいですか？』
高島「え、ええ。行きましょうか」
続く (更新停止中)
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作者名：Sum | 作成日時：2019年12月1日 12時
