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好きな季節は？と聞かれれば私はきっと「秋」と答えるだろう。
大学時代は伸ばしていた髪の毛を切り、ショートになった私は、一枚の写真を眺めながらそんなことを考えていた。
「なーに、見とるん？」
後ろから誰かに抱きしめられて、吐息が耳にかかる。誰かなんて一人しかいなくて私は笑って「ん〜、結婚式の写真だよ」とそれを見せる。
人生で一番美しく着飾った私の隣には、珍しく緊張したように笑っているオスマンがいた。真っ白なタキシードが似合わずに直前で黒に変更したがそれはまあ中々様になっていて悪くはなかった。
なによりも、秋の気候を一身に受けた紅葉が美しく私の白と彼の黒を際立たせてくれている。侘しさと静かな情熱を感じさせるその情景は、少しだけ彼と似ていて、何度見たって笑みが溢れてしまうのだ。
「まさか小学生の時にあれほど苦手だったオスマンが旦那になるとは…」
そんな呟きが聞こえたのか、後ろに回っていたオスマンは軽々とソファーを乗り越えて私の隣に座る。
「まあ、俺は初恋が実って万々歳やけどな？」
何ともなしにそんなことを突然言うから、えっと声が出る。
「あ、言っとらんかったっけ」
「言ってない！」
「びっ、くりしたぁ…え、そんなムキになるとこ？」
「当たり前でしょ！ でも…冷静に考えたら私失恋してから気付いたらオスマンと結婚してて、あれ、…」
「相手が失恋してからが始まりなんやで？」
惚れた弱みというやつか整った顔で彼はあの見慣れたにやけ顔を見せる。ソファーから立ち上がり、写真立てをリビングの中で一番目立つところに置くと、「人の気持ち、理解するの遅いんとちゃう？」と彼が言う。
「はい〜〜？ 言わない方が悪いんでしょ！」
「こうやってムキになるとこもほんまに変わらんねんな。…まだまだお子様なことで」
「オスマンに言われたくない！！」
私達の日常は変わることなく過ぎていく。この先、年老いたおばあちゃんとおじいちゃんになったって彼はいつまでも私をからかってくるのだろう。
そして、きっとこの先も、私は彼の隣で成長していくのだ。
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