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「......あなた、誰？」
カツン、カツンと足音が響く。
薄暗い地下牢の中ではランタンで照らさなければ、それが誰なのかも分からない。
......まぁ、私に会いに来る人なんてもういないのだけれど。
呪われた私はあの後、事故を装って死んだことになった。
幸い、生誕祭は終了間際で人は大体の人間が帰っていたため、国王から事故と告げられた国民はそれを信じたのだ。
美人薄命というのは本当ね、なんて言いながら。
きっと盛大な葬式が行われたのだろう。
呪いというものは、我が国ではあまり馴染み深いものではなかった。
父や母がいなくなってから、疫病のように扱われ、呪いが移っては困るという根拠の無い理由で私は地下牢に閉じ込められたのだ。
それから何十年、下手すれば何百年と経っている。
そんな私に、今更なんの用があるのだろう。
「宝物庫ならこっちじゃないわよ。
こんなとこで見つかったら、国家機密の漏洩を防ぐだのなんだので殺されるわ。」
ほら、早くしなさいと声をかけるも、じっとこちらを見つめるだけで、何の反応も帰ってこない。
「ちょっと、聞いてるの？」
重い腰を上げ、足枷に繋がった鎖をジャラジャラと引き摺り、鉄格子にギリギリまで近づく。
うっすら、ぼんやりと見える体格から、線は細いが、男性であることがわかった。
「お前が、この国に言い伝えられとる呪われた姫さんやろ？」
持ち上げられたランタンでゆらりと揺れる太陽のような、宝石のように透明感のあるイエローの瞳が照らされる。
今までにみたことのない瞳の色で、自分とは正反対でドキリとした。
「......どうしてそれを？」
情報は出回らないようにされていたはずだ。
そんな不安定な国だと他国に知れ渡ってしまっては、いつ戦争を吹っかけられてもおかしくない。
そのために私の存在は無くなったはずなのに。
「ん〜、知りたい？」
随分呑気な男だ。見つかってしまったら首が跳ぶというのに。
怖くはないのだろうか。
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