2 ページ23
.
「あぁ、なんて美しい姫様！」
一人の男がおりました。
その男は時代を経るにつれて少なくなった魔法使いでした。
いつもは森の奥深くにある小さな小屋に篭りきりで、ブツブツと呪文を唱えながら、怪しい色の大鍋をかき混ぜているため、誰も近寄ることはありません。
古めかしいローブを着て、ガチガチと奥歯を震わせ、ボロボロの爪を噛みながら、頬を紅潮させるその姿通り。
「この美しさは、未来永劫変わらずにあるべきだ！」
ヤバい人でした。
そんな事を考え始めた魔法使いは、とある呪いをお姫様にかけることにしました。
それも、強大で禁忌であるなんともタチの悪い呪いを。
そうして迎えた姫様の16歳の誕生日。
例年通り大きな宴に並ぶ豪勢な料理。
たくさんのプレゼントにたくさんの祝福。
「姫様に幸福のまじないをかけさせていただきます。」
いつもと違うのは、最後にいかにも怪しい、胡散臭い男がまじないをかけにきた事だけ。
好奇心旺盛なお姫様は怪しむことなく、いつものように笑顔で近づいたことでしょう。
男の口角が不気味に吊り上がることも気付かずに。
「" "」
ぶわりと黒いモヤが姫を取り囲み、禍々しいエネルギーを生み出しながら、それは彼女の皮膚に纏わりついた。
抵抗しようが、振りほどこうが、そんなことはお構い無しにじゅわり、じゅわりと触れた部分から肌にモヤは染み込んでゆく。
恐怖から姫様の顔は歪み、涙を流しました。
男は気味悪く笑った。
「これで、あなたは不老不死だ！」
魔力を使い果たした魔法使いは、その場にバタッと倒れ、そのまま息を引き取ってしまいました。
こうして残された姫様は、どうやったって死ねない体となりました。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
