【wrwrd】「 ─────── 」【企画前編】 (ページ20)

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『…もう、いいんだ。私は疲れたよ』

｢そう、君は貪欲に生きることを辞めた方がいい。もっと自分に素直になるべきだったんだ｣

ぽんぽん、とあやされるように背中を優しく叩かれながら私は静かに涙を溢した
狂人の白い服がシミをつくっていき、それでも彼は私を離さない

もう疲れた、貪欲に生きて救う命は所詮ちっぽけなものにすぎなかったことも。
もう嫌だ、誰かの傷付く姿を目の当たりにすることも。

『私は、誰かを傷付けるために刀を振るっていたわけじゃない。誰かを守るために刀を振るっていたんだ』

全部を守れなくてもいい、自分にとっての大切なたった１つを守れる力が私は欲しかった

貪欲にすがったのは、その力を手に入れるため

強欲になったのは、そうしないといけなかったから

女だからと、しょっちゅう嫌がらせをされてきた
それを耐えて、耐えて、耐えてやっとなれたと言うのに、私が刀を振っていたのは【人を殺める】為だったのだ

『もう、守る者が傷付く姿を見たくなかった』

｢…君は、優しすぎるんだ。｣

温もりが、私を包み込む
こんな事、気付きたくもなかったのに
貴方に会ってしまったせいで、気付いてしまったの

ごめんなさい、ごめんなさい

｢…だから君は、休んだ方がいい｣

『それは、一体…うっ…』

目の前が突如痛みと共に暗くなっていく
首に当てられた手刀が私の意識を奪っていったのだ
なんで、貴方はそんなに哀しげな顔をしているの…？

｢…男女の悲劇の引き金は、何時だって言葉足らず。君はただ【好き】って伝えるだけでよかった｣

ごめんね、A。
俺は君の気持ちに、答えることは出来ない