【wrwrd】「 ─────── 」【企画後編】 (ページ10)

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素直になれない/ci ページ10

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｢お前彼氏出来たん？｣
『は、』

目が合うなり、ケラケラと笑いながら地雷を踏み抜いてくるこの男は同僚のチーノ。

残念なことに、私の想い人である。

｢出来るわけないか｣
『女友達しかおらんくせに』
｢いや？俺は好きな子にアタックしてるから？｣

チーノに想い人がいる事は先輩に言いふらされたらしく、今や部署の人間はほとんど全員が知っている。
そしてまた、私とチーノが喧嘩ばかりしている事も部署中の人間が知っているのだ。

幼なじみのショッピには｢御愁傷様｣と言われ、恋愛のプロであるうつくんには｢まだわからんで｣と励まされてしまった。

他の女性社員には優しいチーノに女として捉えられているかどうかも怪しいのだから、私だって無駄な期待はしていない。

｢ま、俺やったらお前みたいな可愛げのない女嫌やし？｣
『は？』
｢ほんま、かわいそーやな｣

前回の企画チームが同じだったらしいカレンちゃんに優しく微笑みながら手を振って、それから私には明らかに馬鹿にしている笑みを浮かべた。

『私もチーノみたいな男、絶対に嫌やけど』
｢な、ん｣
『あ、ショッピおはよ』

タイミングよく来た幼なじみにわざと手を振り、声をかけ、席を立った。

いつもの事だけど、だからといって慣れるわけでもない。

これでも結局、｢一緒に帰ろう｣と言われればついしっぽを振って1つ返事をしてしまうのだ。

(好きな子と帰ればいいのに、なんて口が裂けても言わない)