【wrwrd】「 ─────── 」【企画後編】 (ページ16)

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「……チョコと飴、ありがとう。」
「いえいえ、別に変なものとか入ってないしお友達と一緒に食べてね。」
「おん、その…さよなら、Aさん。」
「さよなら、トントンくん。」

軽く手を振り、そっと扉を閉めた。

そしてもう一度開ければそこは先程とは違いいつも通りハンガーがかけられたクローゼット。

手を伸ばしても触れるのは壁だけで本当に不思議な体験であった。再び扉を閉めノートパソコンを起動させる。

そうして今起きたことを心のままに書き綴るのだった。

＊

気づけば太陽が沈み月が沈み、そして再び太陽が顔を覗かせていた。

カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく、それから逃れるように浴室に向かう。

ぼんやりとしたままシャワーを浴び、歯を磨く頃にようやく意識がはっきりとしてきた。
それと同時に昨日感じた興奮が再び湧き上がり、自身の好奇心を抑えきれずクローゼットを開ける。

すると昨日と同じようにまた別の世界が広がっていた。

しかし昨日の少年の部屋とはどことなく違っているような気がする。

もしかしてこのクローゼットいくつもの部屋と繋がっているのだろうか……？そう思っていれば人が現れた。

「ッ！？な、お、お前ｯｯ！！！！」
「う、え？しょ、少年……？」

現れたのは昨日見た時よりも随分と成長した少年、いや青年であった。

「い、１日で随分大きくなった、ね……？」
「10年経ったっていうのにお前は全然変わってへんな、って1日……？」
「そりゃ1日しか経ってないからね、って10年！？」

お互いに顔を見合わせてパクパクと口を開いては閉じるを繰り返す。

私が気づかないうちに10年経っていた……？

そんな考えが頭をよぎり、慌ててスマホを見ればやはり少年と会ってから１日程度しか経っていない。

しかし少年は立派な青年にになっているし──。

脳が処理しきれずぐるぐると思考の渦に巻かれていくが、それは決して不快ではなくむしろ自身の胸をより一層踊らせた。

「少年の世界では私たちが会ってから10年経っているんだね？」
「せや。で、あんたの世界では１日しかたってない、と。」
「そもそもこうして顔合わせとるのも意味わからんしなんかもうなんでもありなんやろな……。」

そういう少年の目はどこか諦めを含んでおり、私とは正反対だった。

そんな彼を横目に私は昨日同様向こう側に手を伸ばす。
すると昨日となんの変化もなく私の手は壁のようなものに弾かれた。