＊ ページ24
「…名前を呼んでほしい」
俯きそう告げる彼の声はいつもの威厳のある声ではなく例えるなら迷子になった幼子が母を求めるような声だった。私は思わず彼の手を握った。
『グルちゃん』
「…もう１回」
『グルちゃん』
「…もう１回」
『グルちゃんっ！』
「…ありがとう」
俯いていた彼は顔を上げ真紅の瞳と視線がぶつかる。やはりどこか真紅の瞳は寂しげだ。私はどうしたらいいかわからず口を閉じたまま。それとは逆に彼はゆっくりと口を開いた。
「A、お前は俺たちといて幸せだったか」
一際強い風が吹き込みいつかの大先生のようにその顔は見えなかった。あぁ、また間違えてしまったらどうしよう。私は一瞬躊躇してしまう。その反応を見て彼は安心させるように笑った。
「安心してくれ、答えを求めている訳では無い」
「それにきっと我々はAを不幸にしてしまっただろう」
違う、私は幸せだ。そう否定したかったのに声が出ない。嫌だ、嫌だ。お願いやから伝えさせてや。必死に声を絞り出そうとするがやはり出ない。彼はそんな私が見えていないのかと思うぐらい冷静に話す。彼の手が私の頬を撫でる。今度は暖かさなぞ感じとれない。そして彼は心底幸せそうなそれでいてどこか泣いてしまいそうな笑みでこう告げた。
「どうか我々のいない新たな君の人生に幸多からんことを」
────
待って！そう叫ぶ前に目が覚めた。汗がすごく息もどこか荒い。わたしは膝を抱えて小さくなる。今までに見た事ない夢で酷く動揺した。あぁ、躊躇しなければよかったそうすればあなたにちゃんと伝えられたのに。後悔ばかりがつのる。
心を落ち着かせるために兄さんから貰ったネックレスを握り締めようとしたら
『…ない』
外した覚えがないのにネックレスがないのだ。あたりを見渡す。ない。どうして、どこで、いつ。考えても考えてもわからない。涙がじわりと滲んでくる。
「Aさん、おはようございます」
「！？」
「ど、どうしました！？」
私より早く起きていたらしいエーミールさんは私を見て慌てふためく。私も私で慌てていて
『ないの、兄さんがくれたネックレスがないの！』
堪えていた涙が溢れる。するとエーミールさんは納得して私の頭を撫でた。
「寝苦しそうだったので勝手に外したんです。すみません。」
彼はテーブルの上からネックレスを取り持ってきた。
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もふもふ - 初コメします。今泣きながら読んでます。神作品を産んでくれてありがとうございます。 (2022年11月24日 18時) (
レス) @page12 id: a41408c385 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 水月華さん» すみません。そうだったんですね…。勝手なことをしてすみません。ですが私の端末ではコメを消せないので作者様が消してもらえるといいです。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
水月華(プロフ) - 当作品の中にパスワードについて記載しておりますのでそちらをご確認ください。申し訳ないのですが読みたいと思っている方だけに読んで頂きたいと思っておりますのでそうでない人の目にもとまりやすいコメント欄でパスワードを書くのはやめてください。 (2019年11月6日 8時) (レス) id: fac1d7eb45 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - パスワードは1029です。本人様ではなくすみません。ストーリーの中で見つけられず、コメ欄に来た方々にこのコメを見ていただけるとありがたいです。 (2019年11月4日 15時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
案山子 - 凄く面白い作品でした！是非続編が見たいので、パスワードを教えてもらってよろしいでしょうか？ (2019年11月4日 1時) (レス) id: 51ee2da9ff (このIDを非表示/違反報告)
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