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ページ19

冷たい風が私の頬を撫でる。エーミールさんに持っていてと言われたのは小さな鞄だけ。おそらく本当に少しのものしか持っていないのだろう。まぁ、カバンすら持たずに財布だけできた私よりはるかにマシだが。


とはいっても当初は徒歩で移動する予定だったから持ってこようにも持ってこれなかったのだけど。ビュンビュンと風をきって進むバイク。どこに向かっているのかは知らないがこれなら日が昇る頃までにはこの国を出られそうだ。



そのことに安堵しつつ1人考え事を始めた。





───



いくら約束とはいえどうして彼はここに来たのか。



これがいまだに疑問でならない。約束したじゃないですかといって笑った彼。しかしこの行為がバレればただでは済まないのを私も彼も知っている。彼は旅行なんて簡単な言葉で済ませたがそんなに軽いものでは無い。私が軍を抜けるのの手助け、きっと彼は周りから"共犯者"として取られてしまう。



そうなればいくら幹部とはいえかなりの処罰が下るだろう。たとえ幹部たちがその罰をくだしたくないとしても外部がそれを許さない。



それでは困る。私と違って彼は膨大な知識を用いて我々を勝利へと導く、我が軍の頭脳。かけてはならない人だ。


まもなく夜が明けるがまだ取り返しがつく。国境まではあと少しこの国を出る前に彼とはお別れしなければ。





───



運転するエーミールさんに話しかける。



『エーミールさん』
「…?」



彼は一瞬反応したがどうやら風の音が邪魔して聞こえなかったようだ。今度はさっきよりお腹に力を込めて



『エーミールさん!!』
「なんですか?」



今度は聞こえたようで彼もまた少し声を張って返答してくれる。


『国境手前で止まって!』
「?…ええ。分かりました」


さっきと同じ音量で喋れば直ぐに通じ彼は不思議そうにしながらもそのことを承諾してくれた。



彼をもう一度ぎゅっと抱きしめ直す。ほのかに香るタバコの香りに少しだけ寂しさを覚えた。この匂いともお別れだ。



永遠の別れとなるか、それとももう一度、今度は地下牢もしくは処刑場で会うか。それはまだわからないけど、どちらになってもきっと彼と親しく話すのはこれが最後だと私はそっと息を吸い込んだ。



冷たい風と一緒になって彼の香りは私の肺を満たす。

*→←忘れて



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もふもふ - 初コメします。今泣きながら読んでます。神作品を産んでくれてありがとうございます。 (2022年11月24日 18時) (レス) @page12 id: a41408c385 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 水月華さん» すみません。そうだったんですね…。勝手なことをしてすみません。ですが私の端末ではコメを消せないので作者様が消してもらえるといいです。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
水月華(プロフ) - 当作品の中にパスワードについて記載しておりますのでそちらをご確認ください。申し訳ないのですが読みたいと思っている方だけに読んで頂きたいと思っておりますのでそうでない人の目にもとまりやすいコメント欄でパスワードを書くのはやめてください。 (2019年11月6日 8時) (レス) id: fac1d7eb45 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - パスワードは1029です。本人様ではなくすみません。ストーリーの中で見つけられず、コメ欄に来た方々にこのコメを見ていただけるとありがたいです。 (2019年11月4日 15時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
案山子 - 凄く面白い作品でした!是非続編が見たいので、パスワードを教えてもらってよろしいでしょうか? (2019年11月4日 1時) (レス) id: 51ee2da9ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水月華 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年1月27日 18時

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