第十一話 ページ13
*
「イッチ(一)年生はこっちだ！」
狭いプラットホームに、ハグリッドの大きな声が響く。
ホグズミード駅で停車した汽車から降りた私達は、周りの人波に押し流されるようにして歩いた。凸凹のぬかるんだ馬車道に着くと、そこには百台以上の馬車が待ち受けていた。
「お姉ちゃんっ」
はぐれたら困るから、と私の手を握っていたルルはその手に軽く力を込め、不思議そうに私を見上げた。
「あの馬車、どうなってるの？ 透明な馬に引かれてるみたい！」
ルルが言ったことは間違ってはいないと思う。なぜなら、馬車は生徒が乗ると独りでに走り出し、隊列を組んで進んでいくのだ。
「魔法か、もしくはそういう魔法生物がいるのかな」
私達は馬車に乗った。かすかに黴と藁の匂いがしたが、気に止めるほどではないかな。
「やあ、A。久しぶりだね」
柔らかく細められた灰色の瞳と目が合った。穏やかに微笑むのはセドリック・ディゴリー。二人だけで馬車を使うことに抵抗があり、ちょうど近くにいた彼に一緒に乗ってもらったのだ。
「久しぶり。でも、急にごめんなさい」
謝った意味がわからなかったようで、彼は首を傾げている。
「もしも、貴方が友人を探していたのなら申し訳なくて……」
「大丈夫さ。はぐれたら個々で行こうと話してあるからね。それに、どこかに乗せてもらいたかったかラッキーだったよ」
「そう言ってくれると有り難いよ」
私達は互いに笑みを浮かべた。
彼とは、ホグワーツの廊下の曲がり角でぶつかっただけの関係だ。そのときに名前を名乗っていなければ、再び話すことはなかったかもしれないね。
スリザリン生である私に、こうして隔たりなく接してくれる彼の人柄は良いものだと思う。彼の笑みは、なんだか落ち着く。ハッフルパフの生徒は皆そうなのだろうか。
「えっと……お姉ちゃん、この人は誰？」
……ルルに紹介するのをすっかり忘れていた。少し慌てて私が声を発しようとすると、それより早く彼自身が話し始めた。
「挨拶が遅れたね。僕はセドリック・ディゴリー。よろしく」
「ルル・ミルキテットですっ。よろしくね！」
彼が差し出した手を握り、ルルは大きな琥珀色の瞳を輝かせた。
うっすらと彼の頬に紅がさす。それは見慣れたものだ。だというのに、胸に穴が空いたような消失感を覚えている。それは何故？ 彼が、駅にいた大勢の人と同じだとわかってしまったから？
……私は、何を期待していたのだろうか。
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璃雨(プロフ) - 出会った頃より大人になってしまったけれど、何度読み返しても大好きな作品です。またどこかで闇霧さんの紡ぐお話と出会いたいです。プレッシャーになってしまったら申し訳ございません。素敵な作品をありがとうございました！ (2月13日 20時) (
レス) id: b41fde6459 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 初めてまして！すごく面白くて最初から、一気に読んでしまいました！更新はもうされないのですか？ (2021年11月12日 16時) (レス) @page25 id: 71df9104ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆりりん(プロフ) - 続きをお願いします。姉が妹にあんたのことなんか大嫌いだって言うところと、そんでもって姉が救われるところが見たいです。どうかお願いします。 (2021年3月12日 0時) (レス) id: 9679665185 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - この作品が大好きです。更新再開、いつまでも待ってます。 (2020年4月15日 2時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
純菫 - 私自身、この作品が大好きなのでこれからも応援しています。 (2019年2月16日 13時) (レス) id: 570a47b5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：闇霧 | 作者ホームページ：存在しないようですよー。
作成日時：2016年9月25日 18時
