赤い櫻は冬に咲く 【SS/HBD】

君の隣【NS】 恋色 ページ45

｢手術をはじめます｣

メスを握ると



あの日の記憶が蘇る__________








高校2年生の夏


蝉の声なんかに負けないくらい輝いた声で



｢ね、翔ちゃん｣



彼は僕の名前を呼ぶ


太陽はまだ沈むことなく

僕らを容赦なく照りつける



｢ん？｣



｢大学…決めた？｣



堂々とした太陽とは対照的に不安気に問うた



｢ううん、まだ｣



ふーんと興味無さそうな相槌を打つ彼の顔は少し嬉しそうだった



｢和は？｣


｢俺も、まだ決まってないや｣


そっか、と同じく興味無さそうに返事をした


｢ね、翔ちゃん頭いいしさ、お医者さんとかどう？｣



｢は！？｣



突拍子もないことを言う彼は、なぜか誇らしげな顔をしていた


｢翔ちゃん失敗しなさそうだなー｣


"俺、成功しますから"


くくっと口元に手を当てて笑う

少し可愛い、なんて思ったりして


変な感情を流すかのように蝉の声に集中する


｢バカにしてるだろそれ(笑)｣




｢で、俺はその第1助手ね｣



蝉の声なんか聞こえない


輝いた声で彼はそう言うから


赤く染まった頬を


照りつける太陽と彼のせいにした

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