赤い櫻は冬に咲く 【SS/HBD】

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そうして、二日後…昇格の日の前日の夜、俺はカズの部屋の前に立っていた。


俺が昇格すること、自分が解放されることをまだ知らないカズは、今日もまた俺を呼び出したのだった。


ガチャッ


「……カズ」


「……今日は来るの遅かったですね？」


くるりと振り返ったその顔は、やっぱり綺麗で。
そう言えば、この胸にくすぶる恋心を自覚してから会うのは初めてだと思いだした。


「…早くやれよ」


今日はさっさと終わらせたくて、首をぐっと近づける。
早くここから出て行かないと、気持ちが溢れてしまいそうだったから。


「今日はずいぶん積極的ですね？」


口角を歪めた笑顔ですら、今日は眩しく映る。


そのまま、勢いよく噛みつかれた。


「んんっ……」


じわんと広がる痺れに、やはり漏れてしまう声。


じゅるっ、じゅるっ、と生々しい音が、すぐそばから聞こえる。
その音が今日で最後だと思った瞬間、口が勝手に動いていた。


「ハアッ……カズ…、明日で俺は、昇格するんだ……カズは、自由になるから…」


言い終わった瞬間に、首元の頭が、急に動きを止めた。
バッとこちらを向いたカズの目は、驚きに見開かれているし、口をぬぐう余裕もないようだ。


「……ふ、」


しかし、そこからは予想外の動きを見せた。


瞳は瞬間に細められ、唇はキッと結ばれ、俺に詰め寄ってきたのだ。


「ふざけんな、何だよ急に！なんでもっと早く言わなかった！」


「…言われたのがつい最近だったから……」


「それでもこんな最後の日に言う事無いだろっ……！」


ふいっと目を逸らした後、


「！！……ちょっと、カズ…」


がばっと、抱きしめられた。
俺より小柄なはずなのに、その体の温かさに安心して、身をゆだねてしまいそうになる。


「口実まで作ってあんたの傍にいたかったのに…！」


絞るように出された声に、心臓がぎゅっと掴まれたような気がした。
都合よく聞こえてしまうのは俺の幻想？


「どうして俺から離れていくんだよ…こんなにっ……」


――好きなのに。


その言葉を聞いた途端、俺はカズの唇に自分のを重ねていた。


離れる瞬間に呟く。


「……俺も…好き……」


カズの瞳が一気に茶色に戻ったのを、視界の隅でとらえたら。
再び、お互いの唇は触れ合っていた。


後頭部を掴まれて何度も重ねられ、端から漏れる唾液は舐めとられる。


ようやく離れた時、俺の腰は抜けてしまっていたし、カズは今までで一番きれいな顔でほほ笑んでいた。

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