赤い櫻は冬に咲く 【SS/HBD】

練習曲29番【MS】【OS 】大○ ページ15

高校の部活ってみんなどんな感じだったかな？淡い青春、汗かいて仲間と笑いあってとか？そんな綺麗なもんじゃないんだよ…

「松本またそこハシってる！一旦止め…二宮優しく！相葉丁寧に！」

渡り廊下の手すりに寄りかかって演奏を聴きながら俺たちの指導をしてくれるのが櫻井先輩、2年生にしてコンサートマスターとして山風高校のオーケストラ部を引っ張ってくれる天才バイオリン奏者だ

音楽部っていうと顧問の先生が指導してくれて音楽室でみんな一緒にやるイメージが有るだろうけどそんな事週に2、3回しかない

「今日はうどんが食べたいから四国行ってくるわ〜自主練しといてなー」

って言葉を音楽室のホワイトボードに書き残して讃岐うどんを巡る旅に出た顧問に代わって各楽器の最上級生はそれぞれの後輩を徹底的に指導してくれる、今日はチェロとビオラの最上級生が休みだったから弦楽器の生徒を集めてバイオリンの翔さんが面倒を見てくれてる

俺はチェロ、一緒にやってる2人はビオラの一年生ニノと自称コントラバスの風雲児、相葉雅紀、2人とも一年生なのにもかかわらず注意されてるのは表現力の問題

対して俺…二年生、注意されるのは毎回基礎、リズムとか弓の抑え具合とか…演奏を毎回止めさせてしまうのはいつも俺

チェロに入ってきた後輩は小学生の頃からチェロを習ってた子、当たり前のように俺より上手くて顧問の先生からも信頼されてる、俺よりも…

仕方ないと思わない？ニノは器用だしビオラの先輩は国際コンクールに出たことある優秀な人だから指導も良い、相葉ちゃんはあぁみえてお金持ち、小さい頃からコントラバスをやってきたんだからうまいな決まってる

フツーの家庭でフツーに生きてきた俺が後輩にバカにされるのも当たり前、顧問の先生から相手にされないのも当たり前…

これでも一生懸命やってると思う、チェロの先輩が習うより慣れろって方針で指導をきちんとしてくれなかったって事は言い訳にはしたく無いけどそれも一因としてあると思う

「部活…楽しくねぇ…」

仲間と笑いあえって言われたってチェロのメンバーは3年生のラブラブカップル2人と2年生の俺、一年生で俺より上手い後輩の4人だけ…部活中にキスする先輩達とも部活中にイヤホンつけてプロの曲聴きながら個人練習してる後輩と馴染めるわけがない…

なんで俺チェロにしちゃったんだろう…本当に部活が嫌で休むための理由を探すのが毎日の日課になってきた

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