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Sサイド
心にふっと静かな静寂が訪れて
鼻の奥がつんと熱を持った感覚に、ようやく智くんの肩から顔を上げた。
「も……へーき」
「ほんとに? ちゃんとスッキリした?」
頷くと同時に、言いようもない安心感と申し訳なさで顔が熱くなる。
そんな俺に智くんはふにゃっと微笑んで言った。
「ね、ちょっと目つぶって」
「え」
「いいからいいから」
言われた通りに目をキュッと瞑ると、少しの間遠いところで荷物をカザカザと漁る音がして
戻ってきた智くんの気配とともに、右手にひやりと冷たい何かを感じた。
「はい、いーよ」
柔らかい声に瞼を開けると
ちらりと顔を見せたのは、薬指で銀色に輝くリング。
「ちょっと早いけど……誕生日おめでとう、翔くん」
その正体が分かった瞬間
枯れたはずの涙がまたじわりと滲んで、視界がゆらゆら揺れた。
「これからもずっと…一生、俺の隣にいて」
「ぁ……」
ぽろぽろ溢れてく涙が、リングの輝きに反射して光る。
ギリギリと痛々しい音を立てていた胸の奥底に、いつぶりか分からない陽が灯った。
「_____はい…!」
拒む理由なんて、ある訳がなかった。
俺の体温を置く場所が、智くんの隣以外どこにもないのだということなんて
とっくに分かりきっていることだった。
智くんの指が俺の髪に絡まって、引き寄せられた唇が智くんのそれと触れる。
「ん……っ、は」
「翔くん、綺麗だ」
低く甘い声で囁かれた魔法みたいなその言葉に、全身が熱を覚える。
長い間感じることのなかったその快感に、何度も何度も深いキスを重ねて
ゆっくりと唇を離して、見つめあって笑った。
「これから俺毎日翔くんのドラマ現場行ってやるよ」
「嬉しいけどダメ、智くんも仕事があるでしょ」
「いーのいーの。なんなら殴り込みに行ってもいいんだよ?」
「ぜっっったいダメ!!笑
でも、まあ……仕事終わったら、迎えに来て、ほしいかも」
「おう、いつでもどんと来いや」
頷いてくれた智くんの手に、俺のそれをそっと重ねる。
待っていたように智くんの指が絡まって、薬指の光がまた笑う。
「…………ね、智くん」
貴方がくれた想いを、言葉を、光を
「……あ、愛してる…です」
「んはは、自分で言って照れてるじゃん」
捨てる方法なんて、俺は知らないんだからね。
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大翔(プロフ) - kkさん» 主催の者ではなく、練習曲29番を書かせて頂いただけの私ですが、主催の方がまだ作者さんを続けていらっしゃるのか分からないので、かわりにコメント失礼します。コメントしていただいて本当にありがとうございます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 7ff2e3a340 (このIDを非表示/違反報告)
kk - 素晴らしい作品!全部すごく良かったです。s受け尊し。 (2020年1月24日 23時) (レス) id: c2bfb0fe32 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - Sさん» 突然失礼します、向日葵です。こちらはあまり更新しないのですが、青い鳥にて騒いでることが多いのでよろしければ…(@air__ap) (2018年2月1日 16時) (レス) id: 76ade9e498 (このIDを非表示/違反報告)
S(プロフ) - 返信ありがとうございます!! 早速検索かけます! (2018年1月28日 3時) (レス) id: 539aafff22 (このIDを非表示/違反報告)
あま音(プロフ) - Sさん» 恋色は青い鳥(@Kw_C2a)もやっておりますよ(*^^*) (2018年1月27日 9時) (レス) id: 95b1de6e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:「赤い櫻は冬に咲く」製作委員会 x他6人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 9時