赤い櫻は冬に咲く 【SS/HBD】

Break The Barrier【NS】 Hall ページ1

塾講師、というのはつくづくブラックな職業だと思う。



何で塾講師なんか続けてんの？櫻井ならどこでもやってけるだろ。

久しぶりに飲みに来た古い友人に言われた。


「何で…って言われても」

何でだ。疲れるし受験時はピリピリしてストレス溜まるし碌な休みも無いし。




ああ、でも。


受験時はピリピリしてるけど、教え子が志望校に合格したら自分のことみたいに嬉しかったり。

難しい問題を教えてて、わからなそうにしてた子が俺のヒントでパッとひらめいたり。


塾講師っていうのは、きついけどその分すっげえやりがいのある仕事なんだ。


「好きだから、だなー…」

「好き？」

何故か怪訝そうな顔をされる。

「好きなんだよ。塾講師って仕事が。やりがいあるし」

「好き、ねえ…。何かいいよな、そういうの」

「え？」

「俺自分の職業好きって思ったこと無いもん。廃れた商店街潰してでっかいビル建ててくだけだから、俺の仕事」


「っ、そんなこと」


「あるよ。上司は理不尽だし、部下は生意気だし…お前が羨ましいよ」


こういうとき、お世辞を言ってくる友人ではないから、素直に嬉しい。

「ありがとう」

俺も素直に言うと、友人は照れたようにへへ、と笑った。


何となく、気まずい雰囲気。


と、それを壊すように友人が口を開いた。

「あー…でもさ！塾講師って出会い無いだろ？辛くね？」

俺のとこ先輩が合コン好きですげーセッティングしてくれるんだよね！そう笑って豪快にビールを煽る友人とは裏腹に、俺は力無く笑ってビールをちびちび。

「え、もしかして結構深刻な問題？」

「いや、深刻…ってほどじゃ無いんだけど」

「そ？なら良いけど。
…あ。もしかして、女子高生に惚れちゃった？」

「はあぁ!?」

何か口に入れていたら吹き出していたであろう勢いで反応してしまった。

まずい、これ怪しまれるやつだ。


「違うよ！女子高生は無いから！」

「ふぅん？」

「ほんとだから！」

「なら良いけどー」

ほ、と息をつく。まだ半信半疑だけどとりあえずは誤魔化せたっぽい。



嘘、はついてない。


女子高生を好きにはなってない。



まあ、だからと言って、





男子高生を好きになってしまったということは、絶対に言えないけど。

・→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す