５７.市松模様の少年と出会う ページ10
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その日Aは、何度目かの始末書を書きながら考えていた。
なぜ自分は技の力加減が出来ずに、いつもやりすぎてしまうのだろう…と。
ふざけているわけでもない、師匠の教えの通りにしているし、実際に稽古の時は何度か成功もしている。
単独任務の時だけなのだ。ひとりで炎の呼吸を使うと、何故か手加減できずに辺り一体を焼け野原にしてしまう。
なぜ…どうして……。
うーん。と座禅を組んで頭のこめかみの部分に指を当てて考え込む。
ポクポクポクポクポクポク、チーン！
とんちのきく小坊主のようにAが閃いた。
(そうか！呼吸の仕方がまだまだなのか！)
思い立ったら即行動、Aは始末書を後回しにして家を出る。
(師匠にまた呼吸の訓練をしてもらおう！)
やはりろくな閃きをしなかったAは、意気揚々と師匠である煉獄の元へと駆け出した。
＊＊＊
煉獄の屋敷へと行ったが師匠はおらず慎寿朗から「杏寿郎なら柱合会議に行った。だから早く帰れ」と教えられてすぐさま産屋敷邸へと向かったA。
その道中で、怪我をした少年を背負った隠とすれ違った。
隠がペコっと一礼をすると、Aは片手を上げてじゃ！っと過ぎ去って行く。
「あの、今の人は？」
背負われている少年ー名は竈門炭治郎。
炭治郎が気になって聞いてみると、隠のひとりが答えた。
「今のは炎柱様の継子の名無A様だ」
「ツグコ？ツグコって何ですか？」
「継子ってのは柱が育てる隊士だよ。相当才能があって優秀じゃないと選ばれない」
それに、と横にいた隠の女の子が付け加える。
「A様は隊士の中でも有名よ。最終選別にたった一人だけで受かって、初任務ではいきなり下弦の陸を倒したの。あの不死川様に怪我を負わせたこともあるわ」
「す…すごい人、なんですね」
「ええ。謎が多い人だから詳しくは知らないけど、怒らせないように気をつけなさいね」
はい…と返事をしながら、炭治郎が振り返ってAの背中を見つめる。
「(なんだか不思議な匂いがする人だったな…)」
遠くなっていくAを眺めながら、かすかに鼻に残る彼女の匂いを思い出す。
二人が再び出会うのは、すぐ先のこと。
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作者名：下野岸 | 作成日時：2021年2月22日 18時
