Hmieさん短編集2 (ページ50)

今日:11 hit、昨日:6 hit、合計:10,680 hit

導入ページ50

眠れない、だなんていつものことで、私はまたスマホを手に取る。
横では大好きな人が、気持ちよさそうに寝ている。

(怖い、んだろうなぁ)

何不自由ない暮らしなのに、常に焦燥感がつきまとって落ち着かない。
きっとこの生活を失うのが怖い。
こんな幸せでいていいのか、怖くってたまらないんだと思う。

「はぁ」

大きくため息をついてベッドを降りようと起き上がる。

「…A？」

さすがというか、あんまり嬉しくないけれど、彼が起きてしまったようで、弱々しく私の手を掴む。

「りゅうくん？」

「どこ…いくん？」

「寝れないから、外の空気吸ってこようかなって」

「ぇ、あかん」

彼はバッと起き上がって私の手を強く握り、そのまま布団の中へと引き寄せる。

「わっ、」

「はぁ、ほんま…心臓に悪いわ。一人で行かすわけないやろ。誘拐されたらどうすんねん」

「んー、そうかもしれないけど…ちょっと体動かしたいなぁって」

「どうしてもって言うなら俺も行く」

「だめだよ、疲れてるでしょ？」

「ほんならいかんといて、このまま離さへんからな」

ぎゅっと彼の大きい体にすっぽりと包まれる形で抱きしめられている私は、また幸せとともに恐怖を感じる。

「…うん、わかった。じゃあ今日はこのまま寝る」

「ええ子やぁ～」

そうしてゆっくりと頭を撫でられていると、段々と睡魔が襲ってくる。

「…大丈夫やからな。大丈夫。」