自傷 ページ16
「いった…」
力を入れすぎてしまったのか、深くまで切ってしまったようで、血がどんどんとあふれ出てくる。
(帰ってくる前に、なんとか止めなきゃな)
急いでティッシュで拭き取り、カバンの中に入れていたハンカチで強く抑える。そうしているうちに、玄関の方から扉が開く音がする。
(やっば、!片付けてない!)
腕を抑えながら、カミソリを引き出しの中に隠し、ハンカチを縛ったあと袖をもとに戻す。
「お、おかえり」
「ただいまーって、A…」
「ごめん。」
床に散らばる数々のゴミを、ぼぅっと見つめて俯く。
「どうしたん?最近はしてなかったやん」
「…我慢してた分、衝動的にしちゃっ、た、みたいな…?ほんとにごめん。」
またこうして、迷惑をかけて心配させて、彼の心労になるのが、本当に嫌でたまらない。
「そっか…ほんなら、話聞くから」
そう言って、彼はゴミをまとめ始める。
「あ、いいよ!自分で片付けるから!」
彼の手よりも早く雑にまとめて、ゴミ箱に一気に捨てる。
「隆くん疲れてるのにごめんね!ご飯作ってるから早く食べよ!」
少し冷めてしまった料理を火にかけようとして、手を重ねられ止められる。
「ご飯は後でええから。今はA優先」
と、腕を引かれる。
「っ、!」
掴まれた痛みになんとか耐え、再びリビングへ。そのままソファに座らせて、抱きしめられる。
「話せることだけでええから。Aが辛いのに、何も知らんのは嫌やねん」
背中に回された彼の腕は、微かに震えていた。
18人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みぃこ | 作成日時:2023年3月28日 18時