都合の良い ページ34
彼女のスマホの画面に、1件の通知が浮かび上がる。
「あ、まさきからだ」
少し弾んだ声が耳に痛い。
「会いたいってきてる〜。んーしょうがないなぁ」
なんて言いつつ、彼女の顔は緩みきってる。
「行くん？」
「うん、行こうかな。」
あぁ、本当に好きなんだな。ぼんやりとそんなことを考えながら、グラスを手に取る。
「今日はありがとね。また飲も」
これお金、ぱっと手渡してくる彼女に、断ろうとして
「だめだよ。友達なんだから、こういうのはちゃんとしないとね」
と釘を刺され、渋々受け取る。店を出る彼女の後ろ姿を見ながら、寂しさと虚しさを感じる。前にもこんなことがあって、そのとき彼女に聞いてみたことがある。
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「なぁ、そんな扱いでええん？好きやったら、彼女になりたいと思わへんの？」
「もちろん思うけど、でも多分、もう無理かな。1回そういうことになっちゃうとね〜」
自分に言い聞かせるように、弱々しく笑う彼女に俺は何も言えなかった。俺やったらそんな思いさせへんのに、なんて。
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「はは、もうやめようって言われちゃった」
「え」
ある日、廊下でばったりあった時、彼女は泣きながらそう言ってきた。
「私が本気になって、辛いのわかってたみたい。ほんと優しいのか、酷いのかわかんないよ」
無理に笑う彼女の手を引いて、俺はぎゅっと抱きしめる。
「なに〜？慰めてくれるの？」
「そう。よう頑張ったな。泣いてええよ」
なるべく優しく、彼女の背中をさする。すると彼女は何も言わなくなり、微かな嗚咽だけが聞こえる。
「…ありがと。今日の夜、空いてる？」
「おう、話聞いたるわ」
目の赤い彼女の頭をゆっくり撫でながら、これからは遠慮しなくていいと、少しホッとした自分がいた。
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作者名：みぃこ | 作成日時：2023年2月16日 15時
