Hmieさん短編集 (ページ25)

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「ん…」

目を覚ますと、見慣れない景色が広がる。慌てて起き上がると、意識がハッキリしてきて、昨日のことを思い出す。

(そうだ、泊まらせてもらったんだった…)

ふんわりと香る濱家くんの匂いは、自分が着ている服からだった。

(服まで借りてるー…ごめんね、濱家くん)

心の中でそっと謝り、辺りを見渡す。人の気配はなく、整えられている部屋があるのみ。ふと、近くのテーブルの上にメモが置かれていることに気づく。

"仕事あるから先に行くけど、起きたら1回連絡してな"

それだけ書いてあり、急いで近くに置いてあったカバンからスマホを取り出す。時刻はもう昼過ぎだった。彼は超人気のお笑い芸人だ。朝早くから仕事があったのだろう、私を追い出さないでいてくれただけでもありがたい。

ごめん!今起きた!泊めてくれてありがとう!

少し考え、続けて送る。

お礼に何かご飯作っておきたいんだけど、希望ある?

よしっと画面を閉じ、伸びをする。自分にかけられていた毛布を丁寧に畳み、ぽすっとベッドの上に置く。

(…ってあれ、私ベッドで寝てたってことは…)

サーッと血の気が引く。

「濱家くんもしかしてソファとかで寝てた？！」

リビングへと顔を覗かせると、そこにも毛布がかかっていて、罪悪感に襲われる。

(こ、これは気合い入れて作らないと…！)

罪悪感からやる気がさらに湧いてきたところで、ピコンっと通知音が鳴り響く。

濱家隆一よう眠れたみたいでよかったわ笑

濱家隆一そうやなぁ、なんか辛いもんがええかも

表示された通知を見て、財布を手に取り、上着を羽織って、外に行く準備をする。

(あれ、そういえば鍵…)

さすがに戸締まりはしっかりしなければ、人気者の彼の家だ。何が起こるかわからない。

ちょっと出掛けたいんだけど、鍵ってどこにある?

濱家隆一玄関前の棚のとこにあるはず

了解!

スマホをポケットに入れ直し、少しワクワクしながら鍵を手に取り、近くのスーパーへと向かった。