Hmieさん短編集 (ページ16)

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「ちゃんと飲んだ？」

「うん、一つだけ」

彼は私のことをただただ心配してくれている。けれど、きっと私は2錠以上飲んでいても嘘をつくだろう。

「食べ終わったら起こして？洗うから」

それだけ言ってスマホを置き、そっと目を閉じる。

(このまま寝ちゃいそう、薬飲んだし)

起きれないとわかっていても、一人でベッドに行くのは寂しかった。

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隣でソファにもたれかかって眠るAを起こさないように、そっとテーブルの上を片付ける。

(起こせへんなやっぱ)

食器を洗い終わってから、寝室に毛布を取りに行き、リビングへと戻る。そして、座ったままの彼女を横にしようとして、あることに気づく。

「なんやこれ…」

ちらりと袖から見えたAの手首に、猫に引っかかれたような傷跡があった。するっと袖をずらすと似たような傷がいくつもあり、思わず顔をしかめる。

「A、」

名前を呼んでも、薬のおかげでぐっすりと眠っているAには届かない。そっと袖をもとに戻し、次に彼女が起きたときにどんな顔をしようか、どんなふうに切り出そうか、そんなことを考えていると、今度は自分が眠れなくなっていた。