Hmieさん短編集 (ページ43)

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「あの、本当にありがとうございました」

「いえいえ、大したことしてないんで」

謙虚な態度の彼は、そっとカップに口をつける。その姿がものすごく画になっていて、不覚にもドキリとしてしまう。
けれど、そんな中気になるのは、周りからの視線がチラチラと、彼に向かっていることだった。

(まぁ、確かに整ってはいるかも)

その理由をぼんやりと考えて、勝手に納得していると、女性客2人組が私達の席に寄ってくる。

(え、逆ナン…？！)

驚いて目を見張る私とは対称的に、目の前の彼は慣れた様子で、

「ありがとうございます～」

なんて対応をしていて、そこにもまた驚く。2人が去ってから恐る恐る

「あのもしかして、何か活動されてる方ですか…？」

と尋ねると、

「あぁ、まぁその、そうですね…」

「あっ、そうなんですね、！それなら早く出ましょうか」

この状況は、彼にとってマズイかもしれないと思い、急いで身支度をする。お会計は私が全額払うつもりだったのに、

「先に出といてください」

と押し切られ、結局奢ってもらうこととなった。

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「あー、あの、、ライン、交換しませんか」

「え？」

「その、個室の店やったら、落ち着いて話せるかなって」

「あ、そうです」。えーと、貴方がそれでいいなら」

そういえば名前を聞いてなかった、とこんな時に気づく。

「これ」

差し出された画面から、友だちに追加すると、"濱家隆一"という名前が表示される。

「えーと、濱家さん、ですか？」

「そうです。名前言うの完全に忘れてました、すんません笑」

「いえいえ！私も言ってなかったので！AAと言います。よろしくお願いします！」

お互い自己紹介し終えたところで、ちょうど駅につく。

「本当にありがとうございました。また改めてお詫びさせてください」

「そんな、ほんまに気にせんといてください。普通にご飯行きましょ」

柔らかい笑顔を見せる彼に

(本当に良い人だなぁ)

なんて考えながら、軽くお辞儀をしてその日はそのまま別れた。