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you side
美雨も幼稚園の友達と仲良くなったそうで
今では曇りの日でも
ぴょんぴょん喜んで歩いていく
そして今日は
私が1人で初めてする仕事
仕事って言っても簡単で
新しく出来たと言うカフェの書類などを
持って確認をするだけの仕事だった
忌々しい坂を登り
振り返るとキラキラと輝く海が広がっていた
「こんにちは,役所の吉田と申します」
デッキにいた
エプロンをして後ろを向いていた男の人に声を掛けた
「あっどうも
え?A先輩?」
振り返ったのは
中学と高校の後輩で同じ写真部だった
“永瀬廉”だった
「永瀬くん?」
「帰ってきたんですか?」
「まあね。永瀬くんはカフェ開いたんだ」
「そんな感じっすね」
相変わらず変わらない爽やかな笑顔で
作業をしている彼はきっと今でもモテるのだろう
「結婚したんですよね?」
「したよ」
というと何か言おうと彼はしたが
私の左手の何もついていない薬指をみて
唾と一緒に言葉を飲み込んでいた
「平野先輩とは会いました?」
ドキッとしたが
やっと紫耀のことを話してくれた人がいて
心のどこかでホッとした自分がいた
「まだ,会ってないよ」
そう答えると彼は目線を下に下げた
きっと彼も紫耀と会っていないのだろう
「今日はありがとうございました」
「こっちこそ,また来てな.Aさん」
忌々しい坂を下り海に向かって歩く
この前海の中心に叫んで
そのまま落ちてしまえば
どれだけ楽だろうか
今日も私は色のない世界を
いつかこの海の色を見るために
懸命に生きてる
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作者名:ライオン | 作成日時:2019年10月6日 20時