満月の夜の舞踏会 (ページ7)

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岸side

2週間ほど前，

この町にある女の人と子供が帰ってきた

その女の人は
可愛いと言うより大人っぽくて
することは完璧ですごく優しくて

ああ…あと色が見えない人だ

それと俺を恋という海に溺れさせた人

頭がよかったAは
東京の大学に行くことになって

それから
紫耀，有香，A，俺のグループは
離れ離れになった

まあ離れ離れになった理由は
あの事故の事もあるあるけど

戻ってきて初めてみたAは満月に照らされていた。まるで誰かを待っているように

きっと紫耀を待ってるんだろうな

家に帰って
部屋に鳴り響く電話の音

やっぱり出ないよなって思ったその時

「もしもし」

何年かぶりの紫耀の声がした

「あっもしもし俺。岸！」

「岸くん？久しぶりだね」

「何年ぶりだろ」

「何かあった？」

紫耀はなんでもわかられる
これを言うために電話をしたのに
いざとなったら声が出にくくなる

「…帰ってきた」

「誰が？」

「A。旦那と別れたんだって言ってた
どう？また会えないかな？」

そういうと紫耀は深呼吸をし

「ごめん。会いたくない」

そう答えた

嘘つき

本当は今すぐ車に乗って迎えに行きたいくせに

そんなこと俺に言えるはずもない

電話を切ると
頭の中に高校の時の記憶がぐるぐる回る

「じゃあ俺が色教えてやるよ」

無理だって
紫耀には勝てないって思ってるのに

ちょっと昔みたいに笑い合えるんじゃないか
って期待ちゃう俺はもう居場所なんかない

少しだでいい
彼女が俺に笑ってくれたらそれだけでよかった