花氷が溶ける頃 (ページ10)

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8話ページ10

ガラリ。

静かな図書室に扉を開く音が
やけに大きく響いた。

そろそろと後ろを振り返ると
今朝会ったばかりの彼が立っていて。

不良っぽい容貌は、お世辞にも
この図書室に合っているとは言いがたかった

？？？「、、てめぇは。」

彼も私に気がついたのか、鋭い双眸を
小さく見開いた。

妃「あの、今朝のこと、謝れなくてごめんなさい。
あと、手を貸してくれてありがとう。」

お礼を言って、頭を下げると彼はふいっと横を向いた。

？？？「別にそんくらい、ええわ。」

少し反抗的な態度に怒っているのかと思ったが、
どうやらこれが通常モードらしい

司書「やっぱり、君だったんだね。」

私がそこからどう話を聞き出そうと迷っていると
司書さんが話し始めた。

司書「君みたいなタイプの生徒は珍しいからね
トレーニングの本は参考になったかい？」

司書さんの言葉にどう返すのかと見ていると
彼は本を返却棚に直しつつ口を開いた

？？？「説明がくどくて分かりにくい。
具体的な指示がねぇ。図説が見にくい。
もっと読みやすい本はねぇんか。」

思ったよりも確信をついた彼の感想に少し驚く。

見た目に似合わずしっかりしているのだな、などと
感心していた時だった。

司書「私はもう歳だし
全ての本を把握しているわけじゃないから
なんのアドバイスもできないけど、
ここの蔵書をほぼ全部把握してる
妃ちゃんなら、分かるんじゃないんかい？」

思わぬところから話を振られ、少し動揺する

それと同時に、ツンツン頭の彼も
瞳が揺れて、驚いたような仕草を見せた

？？？「テメェ、本当にここの蔵書把握してんのか」

懐疑的な目で見られて
私の負けん気に火がつくのがわかる

妃「まあ、大体は把握してるわ」

言ってしまったものはどうにもならない

そう諦めて、トレーニング本が置いてある方へと向かう

梯子を使って上の方から数冊取りだして彼の前へ置いた

妃「試しに読んでみて頂戴？」

そう言うと彼は渋々と言った感じで本を開いた。