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はじめ side
Aがなかなか運転席を譲ってくれなくて、結局東京まで走らせてしまった。
コインパーキングに車を止めて、準備をする。
「私、原宿とか渋谷とか……行ってみたいです」
俺が変装用のサングラスをつけている時に、Aはボソッと言った。
は「行ったことないの?」
「ずっと静岡だったので……夢みたいです」
隣の路地では、たくさんの人が歩いていてそれをみて目を光らせている。
は「なるべくバレないようにするから」
あの時のショッピングモールでの経験を生かして、サングラスと帽子をつける。
日の出ている時の東京は見つかったら、騒ぐどころでは収まらない。
車を降りて、周りを見る。
人の少ない路地のコインパーキングなのでまだ大丈夫だ。
は「んじゃ行こっか、原宿」
「っはい!」
最新の注意を払って原宿に向かう。
目指すは竹下通り。
若者の聖地と言われている、危険な場所。
東京の街中を見て目を輝かせる愛しのAの夢を、壊すわけにはいかない。
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「わっ」
休日だからか、人は確かに多くすぐに俺とAは人の波に流され離れそうになった。
は「あっぶねぇ!」
Aの肩を抱いて、少し人の波から離れる。
は「大丈夫?痛かったでしょ」
「大丈夫、これが竹下通りなんですね……!」
なんか感激しているようだけど、汗をかいているようだ。
初めての人混みで疲れているのかもしれない。
だって俺はそうだったから。
は「ここから動かないでね、待ってて」
人の波をかき分けて、なんとか反対側の自動販売機にたどり着いてお水を購入する。
そしてすぐに、Aの元へ……
戻る5m前で俺の足は止まる。
Aは、若い3人の男性に囲まれていた。
困り果てて縮こまったAを見て助けなきゃ!と駆け寄ろうとする……と。
男性の1人がAの腕を掴んだ。
男1「近いからさ!おねーさんに似合う服たくさんあるって!」
「あ、あの困るんです、そういうのっ」
プチっ。
俺の中で何かが切れた音がした。
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時