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はじめ side
メインで、お酒を飲んだ。
久々に飲んでいい気分になった。
デロデロになった俺はふらふら歩きながら、Aがいる部屋へ。
は「A〜?」
部屋に入ってすぐに目に入ったAは、可愛らしくスヤスヤとソファーの上で眠っていた。
ああ、天使がいる。
本能的にか、自分の寝床に置いてある毛布をAにかけてあげた。
は「……、」
その時に気がついた。
Aの閉じられた目から、流れる涙が。
しかも、一粒ではない。
涙が流れた跡がある。
正直、いつもの俺なら多分そのまま寝かせてあげると思っていた。
でも、お酒が入っていたからか……俺はAを起こした。
は「……A」
肩に優しく触り、長くて綺麗なまつ毛が上に上がり潤った瞳が現れる。
「ん、はじめさん」
は「……寂しいの?」
「へ……?」
俺らしくない、お酒に酔って閉じ込められた自分がそう言っている気がした。
は「家に、帰りたいん……?」
Aは前に、父親に家を追い出された、と話していた。
追い出されたということは、A自身の意思ではないのではないか。
だとしたら、元の家に帰りたくて帰りたくて、涙を流しながら眠っていたのではないか。
「……ううん」
Aはハッキリと言った。
ホッとした。
「……自分は本当に、ここにいていいのかなって」
まだ眠そうなAは、悲しげに話す。
「……簡単に言えば、居候ってやつ」
は「そんなことない」
Aの瞳が揺れる。
は「ちゃんと理由があって、Aに住んでもらってる」
「……理由、って?」
は「今は言えないけど、ちゃんと言う時が来るから安心して俺の家に住んでいいから」
「なに、それ」
Aは落ち着いたのか、目を閉じる。
そしてそのまま、心地いい吐息をたてて眠りについた。
理由、というのは。
Aが他の誰かにとられないようにするため、だ。
もう決めたことだ。
彼女を幸せにするために前に進むって。
彼女にもう、不幸な思いはさせないって心の底から思って考えて、ちゃんと決めたことだ。
そして今日の俺も、らしくなかった。
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時