【5.】 ページ29
.
はじめ side
原宿で人の波に飲まれながらも、虹色ばかりの美味しいご飯を食べたし。
Aが行きたがっていたスクランブル交差点を渡ったし。
雷門やスカイツリー……色んなところに行った。
色んなAを見た。
そして……旅館も事前に予約しておいた。
なのに。
「いい景色ですけど、狭いですね！」
ワンピースをヒラヒラさせながら、Aは窓を開けた。
外には東京の夜の景色が広がる。
俺はこの旅館によく来る。
そしていつも止まるのは高級な広いお部屋だ。
でも旅館側のミスで高級な広いお部屋は開いていなくて、急遽すっごく狭いけどいい景色の部屋に泊まることになった。
は「……」
布団もくっつけなきゃ2枚ひけない。
俺的には夢のようなシチュエーションだがAはきっと嫌がr
「はじめさん嫌じゃないです？」
は「え？俺は、全然」
「じゃあよかった、さーてお風呂でも入るかー！」
え？
いいの？
は「待ってA本当にいいの？」
「はい」
は「ピッタリだよ？」
「はい」
は「……、」
「お風呂行ってきますね、露天風呂らしいですよ！」
そう言ってAは駆け足で部屋を出て行った。
は「……我慢できるかな、俺」
俺も続いて露天風呂に行くことにした。
.
露天風呂もいい時間なので最後のおじいちゃん1人が俺と交代で出て行ってしまって、貸切状態だ。
は「はー……」
体と頭を念入りに洗い、お湯に浸かる。
疲れた体には痺れるように温かさが伝わってくる。
「はじめさーん」
壁の向こう側からAの俺を呼ぶ声が聞こえた。
は「んー？」
「そっちは人いますか〜」
は「貸切だよ〜」
「私もです、どう湯加減は？」
は「最高〜」
「ですよね〜」
何気ない会話でも、幸福感を得られる。
「私先上がってますね〜」
は「はーい」
俺はもう少し浸かることにした。
今日1日、確かに疲れたけどでもそれよりも幸せなことや嬉しいことがたくさんあって思い返すだけでニヤけてしまう。
は(そういえば、A浴衣かな……)
見たいな、Aの浴衣姿。
雰囲気って大事よ。
は「さぁて、上がるか！」
俺がお湯から上がると、先ほどとは違うおじいちゃんが俺と入れ違いに入る。
その時に声をかけられた。
爺「ふぉっふぉっ、若い子はいいのォ〜」
「ははは、あなたもまだまだ若いですよ」
爺「面白いのォ〜」
愉快なおじいさんだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：999 | 作成日時：2019年6月4日 2時
