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はじめ side


初めて会ったのは、回転寿司の店だった。

昼も過ぎて、家族ずれもちょこちょこしかいなく、
サラリーマンが休憩がてらカウンターにズラリと並んでいた時のこと。


俺は、友達のたなっちと一緒に行ったのでテーブル席に座った。

そしてそのまま、雑談しながらお寿司を食べた。


ふと、隣の席が気になり目をやるとやつれた女性が、一皿のマグロと睨めっこをしていた。

不気味だな、と思ったが目を離せず俺は横目で女性を見ていた。


数分後、女性が箸を持ってマグロを1つ、そしてもう1つ、食べた。


は(なーんだ、マグロに感動してただけかぁ)


俺は目を逸らし、自分の残りのお寿司を食べ始めようとした……が。

隣の女性がお会計ボタンを押して立ったのだ。

一皿しか食べていないのに。


は「……は?」


俺は流石にそれは、と思い女性をガン見する。

よくみると服装もみすぼらしいし、とても女性らしいとは言えない。


いつもなら変なことに関わると騒ぎを大きくしてしまうので、関わらない。

そして今回も放っておこう、と思っていた。


でも、何故か俺の脚は勝手に力を入れて立ち上がり
俺の喉は声を出した。


は「すみません」

「……はい?」


あぁ!何をやっているんだ!と脳内で頭を抱えるも、もう遅い。


は「僕、奢るんでもっと食べてください」


馬鹿か!馬鹿なのか!と何度も自分に言い聞かせる。


「結構です」


女性はキッパリと言った。

でも何故か人見知りなのに、引き下がれなかった。


は「お節介かもしれませんが……腕とか細くて、顔とかやつれてるの見て、居ても立っても居られなくて」

「……、」


女性は黙り込む。

ボサボサの髪の奥で、瞳が揺れる。


「……結構です」


そう言って、俺を振り切ってレジへ向かった。


店員「お会計が108円になります」

「これで」


女性は持っていた110円を出した。


店員「はい、お預かりいたします。2円のお返しです」

「ごちそうさまでした」


店員の「ありがとうございました」の声と同時に店を出ようとする。


は「っこれ!」


今の自分が、正直よく分からなかった。

俺がとっさに渡したのは、自分の連絡先。


「……、」

は「何かあったら、すぐに連絡してください……あ、公衆電話とかだったらお金必要なのでこれも」


俺は女性に、連絡先の書かれたメモと100円玉を無理矢理手に握りしめさせて席に戻った。


本当に俺らしく、なかった。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時

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