14 一等星の慧眼(上) ページ16
声をかけてきたのはまさかまさかの乱歩さんだ。
ええ、嘘じゃんそんなことある?
固まること数秒、たった数秒の間だったにも関わらず、彼にとっては気に入らない事だったらしく、「ねえ」と今度は強めの語気で呼ばれてしまった。
『あ、はい。ええと貴方は─』
「僕相手にそういうのいらない。君もわかってるんだろ?」
驚いたことに…この名探偵様は既に、答えに辿り着いてしまっているらしかった。
いくら何でも早すぎる。
今日が初対面だよ??
いやまあ乱歩さんだもんな…不思議なことじゃないか。
乱歩さんが既に気がついているのだと、私も理解したので、抵抗は早々に諦めた。
無駄なので。
『流石すぎませんか乱歩さん……』
「ふふん!当然だよ。なんていったって僕は名探偵だからね!君だって識ってるんでしょ?」
ええはいそれはもう十二分に。
満足気に笑った彼は直ぐに笑みを消し、ちょいちょいと手招きをした。
もっと近くに寄れという事だろうか?
恐る恐る乱歩さんに近づけば、ぐっと乱歩さんが身をかがめた。
…う。この距離は心臓に悪いです
「君の"ソレ"悪趣味だ。…探偵社に入るつもりなら、せいぜい気をつけることだね。──与謝野さんにでも知られたら雷が落ちる。それと───」
そう囁いた乱歩さんは、言いたいことが云えて満足したのか、ペタペタと足音を鳴らしながら未だに言い争っている二人の元に歩いていった。
「僕そろそろ飽きてきたから帰っていい?出張の準備もしないといけないし」
「ああ!すみません乱歩さん!──おい、小娘」
『………あ、はい!なんですか、国木田さん』
しばらくの放心の後、我に返った私は慌てて国木田さんに駆け寄れば、彼は頭が痛いと言いたげな様子で顔を顰めていた。
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作者名:砂上 | 作成日時:2023年3月21日 18時