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頭の中がぼうっとしてきた。
なんだか凄く眠たい。
ふわふわとして、心地の良い眠気。
きっとこれは、抗えないもの。
炭治郎から離れ、ふわりと布団の上に身を投げる。
なんだか凄く良い気分。
まるで天にでも昇るような。
…これは笑えない冗談かな。
「A」と炭治郎が酷く泣きそうな声で私の名前を呼んだ。
なんて幸せなんだろう。
愛する人のそばで、命を引き取ることが出来て。
それだけで私は、生まれてくる価値があったんじゃないかな。
きっと、この時のために私は生まれてきたんだ。
私の手を、炭治郎の優しくて暖かい手が包んだ。
その逞しい手が、可哀想なくらいに震えていて。
…残される人の方が怖いよね。
目の前で好きな人が息絶えるなんて光景を、あなたに見せることになってごめんなさい。
「…A。何か、して欲しいことはないか?」
炭治郎が努めて明るい声で私に声をかける。
して、ほしいこと。
「うたを…」
「歌?」
「子守唄を、うたって。いい眠りに、つけるように」
炭治郎の手がビク、と揺れた。
それからまた、ぎゅうっと私の手を掴んで。
「俺は歌が下手ってよく言われるんだけどなぁ。それでもいいのか」
「たんじろうの、うたが聞きたい。どうしても、優しいうたが聞きたい」
「…わかった」
こらえるような声だった。
喉から絞り出すような声。
もうすぐこの耳が役に立たなくなる前に、あなたの歌がどうしても聞きたくなってしまったの。
以前聞かせてもらった、何よりも優しいあなたの歌を。
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みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時