聴覚 ページ33
善逸に押し入られるようにして中に入ると、襖を閉じる音を聞いたAがこちらを振り向いた。
「だぁれ、そこにいるの」
Aのその綺麗な瞳は閉じられている。
開いていると、 どこを見ていいかわからないし、勝手に眼球が動くから見目が悪い、という理由であの日からその瞳が何かを映すことはなくなった。
俺はその瞳が、見たいのに、なぁ。
「俺だよ、炭治郎だ」
そっと傍に歩み寄って座ると、Aはふふ、と嬉しそうに笑った。
「そうだと思った。
来てくれたんだね、今日任務だったんでしょ。ゆっくり休んでてもよかったのに、」
「いや、すぐに終わったから…それに、Aのそばにできるだけ居たいんだ。」
君の残り時間はもう、少ないのだから。
するとAはきょとん、とした顔をして首を傾げた。
なんだ、その仕草。
可愛いなぁ、可愛いが過ぎるんじゃないか。
己の恋心に自覚してしまった今、Aの一挙一動に胸が甘く焦がれる。
あぁ、なんでもっと早く気づかなかったんだろうか。
君を想う気持ちを、どうしてもっと早く自覚しなかった。
どうしてこんな、もうどうにもならない時にやっと、それも善逸に言われてから気づいて。
俺は、なんて…馬鹿なんだろうか。
「なぁに、変な炭治郎。」
私のこと、好きみたいだよ。
…なんて。
ちょっと自己中過ぎるんじゃないの、とその言葉を飲み込んだ。
「そういうの、他の女の子に無闇矢鱈に言わない方がいいよ、多分勘違いされるし」
私みたいに。
1人になる時間が増えてから、炭治郎のことを考える日が多くなった。
最初はなんでか分からなかったけど、今なら分かる。
私、炭治郎が好きなんだ。
だから、だからね。
あなたの言葉一つ一つに、こんなにも翻弄されるのよ。
あなたのその、人を想う優しい言葉一つに、頬が紅潮するの。
あなたはきっとそんなつもり無いんだろうけど…
510人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時