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「そんな音させといて、まだ気づかないんだな、炭治郎は。鈍いにも程があると思うよ」
善逸は半ば呆れたような笑顔を浮かべて、それから俺の頬を引っぱたいた。
「いきなり何をするんだ!!」
「いい加減気づけよ、お前もAのことが好きなんだろ!!
そのモヤモヤ教えてやろうか、それはな、嫉妬の音だ!!
お前は俺に敵対心を向けてる、自分の好きな人が取られるかもしれないから。自分の気持ちに正直になれよ、お前…Aはもう、時間が無いんだぞ…!」
それに、Aもお前のことが好きなんだよ。
その言葉が飛び出そうになったけど、急いで飲み込んだ。
こればっかりは、俺が言っていいことじゃないと思うから。
炭治郎は呆けた顔をした後に、「俺は…Aの、ことが…」と呟いたあと、ぽろりと一雫の涙を零した。
やっと気づいたかよ、馬鹿。
「だから、さ。
お前が最後のAとの挨拶してこいよ。俺達はここで待ってるから。Aもきっと、そこでお前を待ってる」
「ありがとう、ありがとう善逸…!俺は、」
「いいって、今はそういうのいいから。早くAの所行ってこいよ」
ぐい、と炭治郎の背中を押して、不安げな炭治郎の顔に笑顔を向ける。
頑張れ善逸、もう少しだ。
もう少し、笑っていろ。
泣くのはまた、後にすればいい。
パタン、と閉じた襖を見届けたあと、1粒涙が目から溢れ出した。
あとはもう早い、1度溢れた涙は止まるところを知らず、こっちの気持ちまる無視で流れ続ける。
襖の奥の彼女の命の灯火は、今確かに消えかかっている。
やけにゆっくりと彼女の胸の音が鳴っているから。
「やっぱり、悔しい、よなぁ」
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みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時