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「Aちゃん、隣座っていい？」
「あ、うん……」
家を飛び出して、コンビニの前を通った時にチャンビニのヌナ……オンニに、見つかってしまってそのまま手を引かれて実家の前にあるチャンビニの実家へ、連れられてきてしまった。
チャンビニがいるのはすぐ分かったけど、その後ろにソアちゃんが見えた時、私はここにいちゃいけないと、そう思ったのに、結局ビニの運転する車の後部座席に、二人、並んで座っている。
「今日、アルバム見せてもらったの」
「……アルバム？」
「二人の小さい時の写真みたんだけど、Aちゃん昔からかわいかったんだね〜！食べちゃいたくなる感じ！」
「た、食べる……？てかチャンビナ……私写ってるのは見せないでよ」
「ヤー……仕方ないだろ、見せる前に抜き取ってたら変じゃん」
そう言うチャンビニにそれもそうか……と思ったけど、やっぱり幼い頃を見られるというのは恥ずかしい。
分かってはいたけど、母も父も、私が家を飛び出したところで追いかけてくれるような人ではなかった。チャンビニの家にお邪魔して、ビニのお母さんやお父さん、オンニを見て、温かい家庭で羨ましいと思ってしまった。
隣で、ニコニコと私を励まそうとしてくれてるのか、色々話してくれるソアちゃんとそれをちらちらと見ながら柔らかい表情をするチャンビニに、私は一人ぼっちで、寂しい人間だなと思って、何だか惨めな気持ちになった。
私に、実家に帰ると歓迎してくれる両親も、喧嘩をしながらも面倒を見てくれる兄弟、姉妹も、あんなふうに柔らかく、愛おしいものを見るように笑いかけてくれる彼氏だっていない。
確かにチャンビニは幼馴染だけど、それ以上でも以下でもない。結局は私以外の誰かと結婚して、子どもができて自分の家庭を築いて幸せになる。私がいつまでもチャンビニのそばにいることは、許されない。
「……何があったか分かんないけど、あんま抱え込むな。俺も、ソアも、いつでも話聞くから。言い難いことならヌナに相談したっていいよ。だから、一人で何でも解決しようとすんな」
「……うん」
マンションまで送ってくれたチャンビニが、私にそう言った。車の窓を開けたソアちゃんが「今度ご飯行こうね」と私に手を振ってくれて、私も手を振り返す。
送ってくれてありがとう、と言うと「ソ交通、初乗り一万ウォンになります」なんて言うのだから、どうしようもない。
「今度飲みいったら奢るよ」
「マジ？やった〜」
「二人ともありがとう」
「じゃ、ゆっくり休めよ」
運転席に戻ったチャンビニと助手席に座り直したソアちゃんに手を振って、私もマンションに戻った。
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作者名：さくらんぼ
| 作成日時：2024年2月17日 18時
