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チャンさんは私を家まで送り届けたあと「早く寝なね」と早く家に入って休むように促した。初めて飲んだ日に送ってもらったきり見ていなかった、ベランダから歩いているチャンさんをタバコ片手に見て、いい人だな、と煙を吐いた。
寂しいから家に上がっていって、なんて、言ってみたけれどチャンさんは「明日早いからごめんね」と、やっぱり線を引かれた。けど、ここで私の家に来ていたら結局この人もその程度の人かと落胆するところだったかもしれない。それはそれで、良かったのかも。
それから、チャンさんはよく私にメッセージを入れてくるようになった。大丈夫?とか話聞くよ、とか色々だけど、そのうち二人で飲みに行くようになって、最近では飲み友くらいには関係値が上がったような気もする。
どこか線を引かれている感じは否めないけど、逆にそれが心地よかった。話してる途中、私の言葉遣いが悪くなってもチャンさんは話を止めないで聞いてくれるのだ。チャンビニは「そんな言葉遣いするな」と怒るのだけれど。まあ、それはそれで私を思ってくれてのことだろうから別に嫌ではない。
「え、本人に聞いて見ることにした?」
「はい。来週、珍しく実家に帰って来るらしいので」
連休になるとその休み中家を開けることの多かった父と母まで家に帰ってくるというのを、ミヨンさんから連絡がきていた。会わなくていいと思っていたけど、会社で変な噂が流れてる以上、問いたださなければと思っていた。
本当のことを教えてくれるかどうかは分からないけれど、聞くだけ聞いてみないとスッキリしない。
チャンさんはそのことを聞いて頑張れ、と応援してくれて。そして、一応、チャンビニには言わないでくれと口止めしておいた。そもそもチャンビニに私の今のことを伝えていないし、私と両親の仲が悪いのを知っているから、無理に接触する必要ない、と言ってくるかもしれないから。それに、心配はかけたくないし。
ということで、旧正月を迎え、私は数年ぶりに実家へと戻ってきた。
「チャイム……鳴らした方がいいのかな」
鍵は持ってるものの、高校を卒業してからすぐに引っ越してそれ以来帰っていない。家にいないことが多い父と母でも、それは私がいつも寝てから帰ってくるから会わないだけであって、住居はここだし、それに、今はこの無駄に広い家にいるのが分かっている。
ほぼ家出のようにしてこの家を出てきたのに、勝手に鍵を開けて入っていいものなのかと悩んでいたら、そのドアがゆっくりと、開いてしまって。
「A……?」
数年ぶりに、母と、再会してしまった。
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2024年2月17日 18時