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「……車、買おうかな」
駅チカ重視で選んだためコインランドリーまで行くのに十数分はかかる。いつもならそこまで量も多くないし、帰りは軽くなるから気にしてなかったけど、こういう時結構困る。ビニール袋に入れた洗濯物を自転車のカゴと、後ろの部分に縛り付けて乗ると不安定だから押して歩くしかない。
だから車……と思ったけど、チャンビニや友人に「お願いだから運転はしないで」と言われるほど私はペーペーなため、すぐに希望は打ち砕かれた。チャンビニに至っては「早死するから絶対にやめろ」とキツく言うほど。車だけ買ったっけ運転できる技術がなければ宝の持ち腐れだ。
「次から洗濯もここでしようかな……」
脱水まで終わらせた洗濯物を乾燥機に放り込んで、ようやく一段落。備え付けのコーヒーマシンでコーヒーを買って、置いてある椅子に座り込んだ。
することもなくイヤホンをしようとしたら、ポケットにもバッグにも入っていなくて、そういえば充電しっぱなしだった、と自分に呆れた。
仕方ないからスマホを開いてインスタを見たり本を読んでいると、隣の椅子に男の人が座って反射的に少しちらっと見てしまった。だからと言って話しかけるわけじゃないけど、雰囲気からして、年下そう。
文字を見るのも辛くなって、スマホを閉じてコーヒーを飲みながらぼうっとすることにした。二日酔いで頭も痛いし、まだまだ眠気が取れない。こんなとこで寝るわけにもいかないから、なんとか目を開いているけど、気づけばテーブルに肘を着いてそのまま眠ってしまったのだった。
「……あの、お姉さん」
「……え、あ、はい」
誰かに話しかけられて、慌てて起きると、隣に座っていた男の子が「終わりましたよ」と乾燥機の方を指さしたため「ありがとうございます」と焦りながら返事をして袋に詰めた。
入れている途中、少し離れたところで私と同じように洗濯物を取り出している男の子を見て、恥ずかしいところを見られてしまった、と頭を抱えたくなった。
「あの、すみません、ありがとうございました」
「いえ、そんな……ゆっくり休んでくださいね」
帰る前、男の子に声をかけてコインランドリーを出た。マスクしてたけど、最後微笑んでくれた顔は目が細めだったな、多分私よりも年下だ、絶対に。もしかすると学生さん。
良い人だったなぁと思いながら、また家までの道を必死になって自転車を押していくのだった。
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作者名：さくらんぼ
| 作成日時：2024年2月17日 18時
