11 ページ11
.
繁華街の方へ歩いていけばこの時間でもそれなりにお店はやっているし、人も多い。一人でも入りやすそうなところに入って、ハイボールを頼んだ。
今どき珍しい喫煙オッケーの店ですぐにタバコに火をつけて、とりあえず一服。インスタを見てストーリーを流し見し、ふー、と煙を吐いた。お酒飲んでただけなのに変に疲れたな、とテーブルに肘をついてスマホを見たりお酒を飲んでいたら「おねーさん」なんて声が入ってきて。
まあ店の人をお姉さん、だの姉ちゃん、だの酔っ払った人は呼んだりするから気にもとめず、そのままスマホをに目を向けていれば「君だってば」と言われて思わず振り返った。
「お姉さん、一人？」
「……まあ、はい」
話しかけてきたのは私と同年代くらいの男の人たち二人で、どちらもそれなりに容姿が整っていてナンパか、と適当に返事をした。
その人は「僕たち隣にいたんだけど」なんて言ったあと一緒にどうかな、とまで言い出してぎょっとした。確かに半個室でもないし大きなテーブルに座っていたからこういうこともあるだろうけど、凄いコミュ力だなと逆に尊敬する。
「お兄さんたち、お酒たくさん飲める？」
「俺は普通だけど、こいつまあまあ飲めるよ」
「お姉さんこそ飲めるの？」
「もう二軒目」
「お、飲めるタイプ？ねえ、どうよ、一緒に飲まない？」
彼氏もいないし、出会いを求めに来たわけじゃないんだけど、まあいいかなと思って「いいですよ」と言おうとした時だった。
肩をとんとん、と叩かれて思わず振り返ると、冬だというのに少し汗を垂らして「お待たせ」と言う、チャンさんの姿があったのだった。
「な、んで……」
「仕事長引いちゃって……待たせたよね？」
「あれ、お姉さん彼氏持ちだった？」
「や、ちが……」
「ご友人の方ですか？」
彼氏持ち、なんて言葉に否定しようとしたら遮るように被せてきたチャンさんに、なんなんだこの人、とキレそうになったけど、私が怒る前に私に話しかけてきた男の人たちは少し不満そうな顔をして背を向けられてしまった。
「もうなくなりそうだね、お店かえよっか」
ありえない、と私がチャンさんのことを見ていると「飲まないの？」と残り数センチのグラスを指さしていて、それが少しイラッときてそのまま飲み干した。
それからお会計を済ませて、チャンさんと二人お店を出たのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 744人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくらんぼ
| 作成日時：2024年2月17日 18時
