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『…ホソク？なにしてんの。笑』
部屋のドアが開いたかと思うと、彼女が入ってきた。
「え、まだ起きてたの？」
時計を見やると夜中の2時だったので少し驚いて聞いてみる。
『違うっての。ホソクが大きい音出すから起こされたんだよ。笑』
たぶんさっきの椅子の音だろう。
今日は一段と大きな音が出たらしい。
「ごめん…」
彼女はクスクス笑いながら俺のベッドへ腰掛けた。
ギシ…と小さな音が聞こえた。
『ずっと前から分かってたことじゃん』
その言葉を聞いて彼女の目を見ると、首を傾げて微笑んでいた。
突然言われた言葉だけど、
俺には彼女がなんの話をしているかが理解できた。
そうだ、その通り。
分かってた。
ずっと前から分かってたよ。
考えまいとして今まで過ごしてきたけど頭の隅には必ず置いてあった。
彼女がいつか死ぬことなんて。
「そう…だな」
『もーなんでそんな暗いのよ！突然死ぬよりはいいと思うけどなぁ』
突然だろうと予測されていようと、
死んでしまうのなら"良い"という言葉は適切じゃない。
なんでそんな暗い顔、って言われても。
自分の大切な人がもうすぐ死ぬと言われて、明るくできる奴がいるか？
死ぬ本人が明るいというのはおかしいと思う。
でも、それが彼女であって、そんな彼女が好きなんだ。
…彼女は怖くないんだろうか。
いつも最高の笑顔を見せる彼女だって、
少しくらい"死"に対しての恐怖があっていいはずなのに。
聞いてみたかったけど、なんとなく躊躇った。
そのことについては触れたくなかった。
俺は冷たい床から腰を上げて、彼女の横へと座る。
また、ギシ…と音がした。
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作者名：とまと | 作成日時：2016年8月25日 21時
