笑って-HS- ページ35
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『ねぇ、ホソク』
彼女に声をかけられ、なんとなく振り向く。
振り向いた先には、いつも通りの彼女の笑顔がある。
俺はその笑顔が大好きなんだ。
だから、あんな言葉は信じられない。
信じる気もないよ。
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"私ね、もうすぐ死ぬの"
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ガタン…ッ
「…ったぁ…」
座ったまま寝てしまったのか、椅子から体が落ちた。
かれこれこんな日が一週間ほど続いている。
ベッドに入ると全く眠れなくて、
椅子に座ってぼーっとしてるんだけど、気づいたら寝てる。みたいな。
んで、椅子から落ちて目が覚める。
「だめじゃん、俺」
はは、と掠れた笑い声を出す自分が可哀想になってくる。
いつもみんなの希望であるべき自分が、
こんな風になってるなんて。
夢であってほしいと思っても、現実である彼女の発した言葉。
何度も何度も頭の中で繰り返される。
「な、なんだよその下手な冗談」
大口を開けて笑ったつもりなのに、
顔が固まって動かなかった。
俺こそ下手な笑顔だっただろうな。
『冗談じゃないよ。ホソクもわかるでしょ。笑』
彼女の笑顔のほうがよっぽど上手だった。
彼女のもうすぐは一体、どのくらいだろう？
1年後？
3ヶ月後？
2週間後？
それとも、数日後？
それは教えてくれなかった。
俺も聞かなかった。
今まで穏やかに流れてた時間に、傷をつけられたような気がした。
二人の間には、今までとは違う空気が流れる。
彼女のいう言葉が本当ならば、
もっと有意義な時間を過ごすべきなのに。
なんでか、分かんない。
どうしよう。
倒れた椅子を直さないまま、俺は冷たい床に座っていた。
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作者名：とまと | 作成日時：2016年8月25日 21時
