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帰りの挨拶が終わり、
みんなバラバラと帰宅していく。
部活に行く人もいれば、
自習室に向かって行く人も。
私はいつも通り家に直行だけどね。
友達は部活だし、
いつも一人で音楽を聞きながら帰る。
一人の時間だって大切だもん。
下駄箱で靴を履き替えて、
イヤホンを鞄から出そうとしたところで…
担任に声をかけられた。
「お、ちょうど良いところに」
『へ？』
「この資料をさ、ホチキスで留めて欲しいんだよ。やってもらえる？」
信じられないくらいの量の紙を渡される。
『いや、あの、今から私帰るん…』
「助かるよ！やっぱ頼れる生徒は違うなぁ〜」
あはは、なんてわざとらしく笑いながら
職員室へそそくさと入っていった。
まじで…、強引すぎだろうが。
なーにが頼れる生徒だよ…。
はぁぁ……もっと早く靴履いてれば…
なんて、今更後悔してももう遅い。
ノロノロと階段を登って、
自分の教室へ戻る。
『もーほんと、重……え、』
重い紙の束を抱えたまま固まってしまった。
だって、まだそこに彼がいたから。
それも、机に突っ伏して。
『ホソク…？』
後ろから声をかけてみたけど、
寝てる…っぽい。
規則正しい寝息も聞こえる…。
気持ち良さそうに寝てるし。
『起こさなくていいか…』
自分の席に座って、作業を始めた。
単純な作業だからいいけど…
早く帰りたいんですけど。
ぶつぶつ心の中で愚痴を言いながら
横で寝てる彼をちらっと横目で見る。
……はぁ、顔整いすぎでしょ…
心臓がぁー…
パチン、パチン、という
ホチキスの音だけが教室に響く。
ここに私の心臓の音さえも
響いてしまいそうでなんだか緊張する。
「…ん」
彼が声を発したからビクッと肩がはねた。
『お、起きてる？』
一旦作業をやめて、彼の顔を少し覗き込む。
すごい気持ち良さそうに寝てる…
こんな作業やめて私も寝ちゃおうかな…。
『ホソク〜…』
呼びかけてみてもやっぱり応答はない。
ふわふわの髪の毛が揺れて、
不意に、とても愛しくなる。
『…』
気づいたら私の手は彼の頭を撫でていた。
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作者名：とまと | 作成日時：2016年8月25日 21時
