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「…す、すみません…?」
身を乗り出してくる煉獄に仰け反るように答えれば少し落ち着いたのか煉獄はため息をついた。
「今後は気をつけるように。…では昇降口まで送ろう」
「あ、ありがとうございます…」
いつも通りに戻った煉獄にコクコクと頷けば優しく微笑んで先導してくれる。
道中はテストの事などを話し、改めて歴史のテストで手応えを感じた、と話せばとても喜ばれた。
「君は本当に教え甲斐があるな!返却の日が楽しみだ!」
「…先生たちは今採点大変そうですね…」
「まぁ、うむ…伊黒などはこめかみに青筋を浮かべているし不死川は瞳孔がかっ開いているな…胡蝶先生も優しく笑っているか心無しかげっそりしているし…変わらないのは冨岡くらいか」
「あぁ…冨岡先生はあまり表情が出ないですもんね…今度、新作のパンでも差し入れましょうか?勿論全員に、ですが」
「うむ、助かるな!残業している者も多くて途中で夜食を買いにコンビニに行ったりもするからな」
教師というのは大変である。
身を削って生徒のために動いているようなものだ。
煉獄の話を聞いて改めて思ったAだった。
…そして感じてしまうのだ。
「(まだ生徒でそんな苦労も知らない私と…こうやって社会に出て働いている煉獄先生…やっぱり大人と子供の差はこういう所で大きいんだよね…)」
Aは小さく溜息をついた。
「気をつけて帰るんだぞ!」といつものようにAを送り出した煉獄はチラリと後ろを見た。
「…どういうつもりだ?宇髄」
「べっつにー。ただ、本人の口から告白を断ったって聞いたほうがお前が安心すんじゃねぇかって思っただけだよ」
いつの間にか後にいた宇髄は煉獄の睨みをものともしないてサラリと言った。
「断っているのは見ればわかる!…それより君、あの子の頭を撫でていただろう」
「だー!少しくらいいいたろうが!アレだ、教師と生徒のスキンシップだ!」
「許さん!」
「お前、教師の仮面が剥がれてっぞ!わかったわかった、ならこの祭の神・宇髄天元様がお前らの結婚式の余興を派手に盛り上げてやるから!」
"結婚式"と聞いて少し先の未来に思いを馳せたのだろう。
煉獄が少し落ち着いた。
このネタ使えるぞ、と宇髄が思ったのはここだけの話である。
「む…仕方ない、今回は許そう」
「ハイハイ」
テストが全て終わるまでは準備室での片付け(お茶会)もお預けである。だから煉獄としてもテスト期間が終わるのは待ち遠しい。
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