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「っ、よもやっ……」
地元では古くから続く名家と言われる煉獄家。
その家の長男である煉獄は呆然と呟きながら布団から起き上がった。
「まさか…いや、不甲斐なし…何故忘れていたのか…」
約百年前の記憶。
自身は鬼殺隊の炎柱として傷だらけになりながら戦場を駆け抜けていた。
母は早世し、父は堕落し…弟を気にかけつつ、辛くとも責務を全うすべく前を向いて生きてきた。
そんな中で巡り合った愛しい愛しい存在。
「竈門A…。Aっ…!!」
月のように静かにAを照らしてくれた存在。
生き急ぐ自分を支え、寄り添い…自分ですら気付かなかった寂しさや苦しみを見抜いて包み込んでくれた。
煉獄家もAに救われたのだ。
そんなAを、煉獄はもはや執着と言っていい程愛し…とにかく溺愛した。
可愛くて愛おしくて…外見も中身も、怒る姿や恥ずかしがる姿も。
兎に角彼女の全てを好きで仕方なかった。
煉獄の重いといえる愛をすべて受け入れ、生涯隣にいてくれて…自分との子供を産んでくれた。煉獄の最期を看取ってくれ、来世でも将来を約束してくれた。
「…うむ!あの子を探さねば!今世でも誰にも渡さん!」
煉獄の判断は早かった。
朝、食卓につきいつものように家族に挨拶すると…父である槇寿郎と弟の千寿郎の様子が少しおかしかった。
「…杏寿郎、千寿郎。朝飯か終わったら俺の部屋に来い」
「承知いたしました!俺も話がありますゆえ!」
「は、はい」
そそくさと朝食を取ると二人して槇寿郎の部屋に向かう。
正面に座った二人に槇寿郎は言いにくそうに切り出した。
「…お前たち、前世という言葉についてどう思う」
「っ、まさか父上も記憶が!?」
思わず叫んでしまった煉獄に、今度は槇寿郎と千寿郎が目を見開く。
「お前…まさか…」
「はい!今朝記憶が蘇りました!鬼殺隊で炎柱として鬼を殲滅していた頃の…」
「わ、私も同じく今朝…その、大正時代の頃の記憶が…」
「……そうか」
槇寿郎は深くため息を付いた。
どうやら記憶が戻ったのは三人で、母である瑠火には記憶は無いらしい。
「…お前、記憶が戻ったのならAさんは…」
「無論!愛しい妻と過ごした日々は全て覚えております!今世でもあの子を探し出し、必ずや添い遂げます!」
あ、これもう見合いとか結婚相手の心配とか必要ないわ。
槇寿郎は即座に思った。
そしてまだ見ぬAに心の中で謝った。
キメツ学園入学式三日前の出来事である。
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紫音(プロフ) - スーちゃんさん» 遅くなりすみません。夢主ちゃんも色々悩んでますが、煉獄先生も頑張ってます(笑) (1月26日 4時) (レス) id: 3cb916d102 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 1999karuma@gmail.comさん» 遅くなりすみません。今世ではまた今世ならではの問題が色々ありますからね…幸せにしてあげたいです! (1月26日 4時) (レス) id: 3cb916d102 (このIDを非表示/違反報告)
スーちゃん - 卒業まで付き合うこともキスもできないですね。卒業まで我慢ですね‼️がんばれ煉獄先生‼️ (10月31日 16時) (レス) @page4 id: 75511c09b5 (このIDを非表示/違反報告)
1999karuma@gmail.com(プロフ) - 今世ではどんな試練が待ち受けてるのか…。前世で大変な思いをした分、少しでも幸せに過ごして欲しいですね😍 (10月30日 21時) (レス) @page3 id: 754e2c97e2 (このIDを非表示/違反報告)
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