炎と月の協奏曲 壱【煉獄杏寿郎】

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「牽制してたのは一目瞭然だったけどな」

「むしろ周りの好意に疎いのは煉獄のせいじゃねェかァ？」


そうなのだ。
前世の煉獄はAと恋仲になってからというもの、Aを溺愛し時間をかけて自分という底なし沼に沈めてしまった。
愛を囁やき、大切に腕の中に囲い、自分だけしか見ないように。それも本人に知られることなく。結果、煉獄の色に染まったAは他の男からの好意には全く興味を示さず煉獄だけを見つめて愛した。


「うむ、この時代でもそうしたいのだが…自由に動けないというのは中々にもどかしいな！」

「宇髄、通報だァ」

「任せろ」


Aのせいではないが、Aが入学してから煉獄に悩まされる事が多くなった気がする。
今はコンプラが壁となってなんとかなっているが…というかまだ入学して二ヶ月も経っていないのだ。これが卒業までだとおもうと…。
早く卒業して煉獄の手綱を握ってくれ、と二人は切実に思った。







教科係の仕事は思っていたほど負担にはならなかった。
不死川の指示は的確だし、放課後もそこまで居残るような仕事は与えられなかったからだ。

炭治郎たちも体育の教科係として授業前の準備等をこなしている(たまにサボろうとした伊之助を捕まえている…)。



ある日、数学のプリントを纏めて職員室に持っていく最中別のクラスの女子たちが話しているのが聞こえてきた。


「ねーねー、教科係何になった〜？」

「あたし国語ー。でも辞書とか運ぶの重くてマジ無理」

「私さ、実はじゃんけんに勝って社会科になったんだよね！」


一人の女子の言葉に周りがはしゃぎだす。


「えー！羨ましー！あれでしょ、社会って煉獄先生！イケメンでやばいよね」

「つか髪派手すぎ！でも顔やばいっしょ、めっちゃタイプ！」

「しかも優しいし。なんか紳士っぽいよね」

「係ってどうなの？煉獄先生のお手伝いとかするの？準備室に二人きりとか羨ましいんだけど！」


煉獄の名前が出てきて、思わず足を止め聞き耳を立ててしまうA。
煉獄が女子生徒と二人きり…。しかもその女子生徒はとはAとはまた違い薄く化粧をして髪をゆるく巻いた、可愛らしいタイプだ。

モヤッとしつつも聞いていれば話はどんどん進んでいった。


「それがさー、驚くほど何にも無いの！プリント持っていっても"そこに置いといてくれ！"って言うだけで殆ど近づいても来ないし。"ありがとう、助かった！気を付けて帰りなさい！"って言われて居座れないし」

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