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「杏寿郎さんは…こういうことする時、意地悪になります…」

「ははは!すまない。なに、君が可愛い顔をするからもっと虐めたくなってしまうんだ」


顎から溢れた唾液を舌で舐めとりながら囁けばAはくすぐったそうに身を捩る。



「…あぁ、しまった」

「はい?」

「寝着や普段使いの着物も少し買っておくべきだった。…これからはここにも頻繁に泊まることになるだろうしな」

「…色々突っ込みたいところはあるんですが、一先ず置いておきます。…お店、今からでも急げば間に合いますかね…」



Aとしても服がないのは困る。
非常に困る。
裸で寝ろとか言われたらもっと困る。(…いいそうなんだよね、この人)

かといって着物はあまり持っていない。煉獄と逢い引きの時に着たものがあるだけで、あとは雨宮が動きやすい袴を揃えてくれていたからだ。



「今日は俺のを貸してもいいが…生家にあるなら明日取りに行ってもいいぞ」



その言葉にAは一瞬言葉に詰まった。
畳の上に倒されたまま、虚空を眺めポツリと呟く。



「……な、い」

「ん?」

「……生家、にはない…、です。家族の血で…全て…汚れてしまったから」


煉獄が目を見開く。


ふと思い出すのは、炭治郎と共に家族の亡骸を見つけた時。
花子を庇うように母が死んでいて。
弟たちが虚ろな目でこちらを見つめていた。

破られた障子。
畳や玄関だけでなく天井にまで飛び散った血。
禰豆子が繕っていた着物や皆が使っていた食器は赤く染まり。
辺り一面血の海だった。



「…だから、生家には着物も…何もないのです。あっても、血塗れで…使えない」

「っ、A!」


煉獄がAをきつく抱き締める。


「すまない!軽率だった!辛いことを思い出させたな…」

「……あ、」


煉獄は唇を噛み締める。
竈門兄妹の身の上は耳にしていたはずだった。それなのに気軽に生家に、などと言ってしまった。
雨宮に、支えてやれと言われたばかりなのに。



「…ごめんなさい、大丈夫です。思い出すのは辛いけど、今は禰豆子を人間に戻すのに集中していますから」



そう苦笑するAを悲しそうな顔で見た後、煉獄は唐突にその体を抱き上げた。



「買い物に行くぞ!」

「………はい?」

「まだ店は開いている!君に似合う服を何でも買おう!」

「………あの、」



ポカンとするAは抱き上げられているので拒否権というか行かないという選択肢が無い。




取りあえず靴だけは履かせて貰った。

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柚葉(プロフ) - 心頭滅却!…笑ってしまった(^.^) (2021年9月30日 14時) (レス) @page47 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 凛華さん» コメントありがとうございます。お誉めいただき光栄です!更新頑張りますね! (2021年9月27日 16時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 柚葉さん» ですよね!あそこで生きていたら…と思うと…生存夢の執筆に力が入ります笑 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
凛華(プロフ) - 主人公の魅力が最大限に引き出される物語設定、人物設定が素敵です。続きを楽しみにしております。 (2021年9月27日 11時) (レス) id: 77a139d8e9 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 泣きながらも、読ませていただいてます。やっぱり生きててほしかった!! (2021年9月25日 23時) (レス) @page39 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫音 | 作成日時:2021年9月5日 13時

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