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…夜中、だろうか。
熱で鈍る思考。
何やら人の声がしてAは目を覚ました。
「ーーっちだ」
「確かー」
「連れてー」
その時。
バタン!
Aの部屋の扉が開いた。
痛む頭に音が響いて顔を顰める。何とか目線だけを横にずらせば、三人の隊士が入ってきた。
「こいつか!怪我を治せる女隊士は」
「赤みがかった長髪…間違いないぞ!」
「早くから連れて行くぞ!」
「………?」
無遠慮に近寄ってくる隊士たち。
「……だ、れ…?何か……?」
「俺達の任務先でな、怪我をする隊士が続出してんだよ!お前、変な力で怪我を治せんだろ?一緒に着いてこい!」
思考が働かないAは数秒かかってやっと言葉を理解した。
「…見ての、とおり…私はまともに、動けません…今は、刀もありません…これでは、現場には…」
「うるせぇ!お前は怪我を治してればいいんだよ!おい、連れていくぞ!」
隊士の一人がAを腕を掴み強引にベッドから引っ張る。
いつもなら毅然と対応できただろう。
しかし今は傷も塞がっておらず、ましてや高熱により意識が混濁し激しい頭痛がしている。
踏ん張っても力が入らず、後ろからも背中を押されてふらつく足取りで無理矢理病室を出された。
「何をしてるんですか!」
それを見つけたのが偶然見回りしていたなほだった。
「Aさんは高熱で絶対安静なんです!どこに連れていくつもりなんですか!」
「チッ、うるさい!」
「きゃっ!」
必死に男の隊服を掴んで止めようのするなほを突き飛ばす男。
「っ、なほちゃんっ」
「早く連れていけよ」
「誰か!Aさんがー!」
手を伸ばすが、隊士たちはふらつくAを半ば抱えるようにして早足で外に出る。
外は雨が降っていた。
「タイミング悪ぃぜ…おい、早く歩けよ!」
冷たい雨が火照った体に気持ち良い、と思ったのも束の間。
ガンガンと頭痛は激しくなり、体が重くて意識はぼぅ、とする。
当然走れるわけないのだが隊士たちはそれに構わずAを引っ張っていく。
近くの森に入ったところで何か気配を感じた。
熱で浮かされていても経験と勘が働いたのだろう。
それは、鬼の気配。
「…お、に…が…来る…」
「え…うわぁ!」
Aが小さく呟くと同時に目の前から異形の鬼が姿を現した。
気配はあまり強くないものの、見た目が醜悪だったのだろう。
Aの腕を掴んでいた隊士は驚き、Aを突き飛ばして悲鳴をあげた。
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柚葉(プロフ) - 心頭滅却!…笑ってしまった(^.^) (2021年9月30日 14時) (レス) @page47 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 凛華さん» コメントありがとうございます。お誉めいただき光栄です!更新頑張りますね! (2021年9月27日 16時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 柚葉さん» ですよね!あそこで生きていたら…と思うと…生存夢の執筆に力が入ります笑 (2021年9月27日 16時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
凛華(プロフ) - 主人公の魅力が最大限に引き出される物語設定、人物設定が素敵です。続きを楽しみにしております。 (2021年9月27日 11時) (レス) id: 77a139d8e9 (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 泣きながらも、読ませていただいてます。やっぱり生きててほしかった!! (2021年9月25日 23時) (レス) @page39 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫音 | 作成日時:2021年9月5日 13時